ロシアと中国が奏でる「化学兵器使用」への序曲 陰謀論拡散のかつてない連携プレー

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趙氏はこれまでにも、武漢で発生した新型コロナウイルスの最初の感染拡大に対する中国の対応のまずさへの批判をかわすため、反アメリカ的な陰謀論を広めてきた。2020年3月には、アメリカ軍が武漢にウイルスを持ち込んだ可能性があるとして、メリーランド州フォートデトリックにあるアメリカ軍関連研究施設がパンデミックの発生源だったかもしれないと述べたことがある。趙氏は10日、またしてもフォートデトリックに言及した。

中国の外交官、政府機関、国営メディアは、ツイッターなどソーシャルメディアの公式アカウントを使って、アメリカがウクライナで生物化学兵器の開発を行っているという陰謀説を拡散している。

前出のシェーファー氏によると、こうしたツイートは235件を上回り、国営メディアのアカウントによるものと、外交官や政府のアカウントによるものがちょうど半々の割合になっている。中国のソーシャルメディアでは、生物兵器研究所について、さらに多くの投稿が行われている。

「ロシアの国営メディアがアメリカのソーシャルメディアから規制対象とされる中、中国の国営メディアがその穴埋め役を担うようになっている」。シェーファー氏は「中国国営メディアが語っていることはクレムリンとそっくりだ」と話した。

これはNATOに罪を着せる準備工作

ウクライナ紛争の動向を追跡しているワシントンのシンクタンク「戦争研究所」も、生物兵器研究所に関するロシアの声明はロシアが生物化学兵器を使用する準備工作の可能性があるという警告を9日に発している。「ロシアはそうした攻撃を決行するかでっち上げ、ウクライナとNATOに罪を着せることで、さらなる攻撃を正当化してくるおそれがある」。

中国の国営メディアは、ウクライナはネオナチだらけだとするデマから、アメリカはウクライナ政府を操り人形にしている「うその帝国」だという主張に至るまで、ウクライナの戦争に関するロシアの公式声明を繰り返している。

中国共産党が発行する国家主義的な新聞「環球時報」は8日、アメリカ政府がウクライナ戦争をめぐる反中感情を扇動するべく、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ボイス・オブ・アメリカに記事を仕込んでいるとする記事を掲載した。

中国国営メディアには、ウクライナは民間人を「人間の盾」に使っていると批判する記事も見られた。これはクレムリンの主張そのものだ。しかし、ロシア軍の攻撃で民間人の死者が出ている点については、一切触れられていない。

微博(ウェイボー)をはじめとする中国のソーシャルメディアからは、親ウクライナ的な投稿は検閲によって削除されている。

(執筆:Edward Wong記者)
(C)2022 The New York Times News Services

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