ロシアと中国が奏でる「化学兵器使用」への序曲 陰謀論拡散のかつてない連携プレー

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ロシアと中国がかつてないほどに連携している(写真:Gabriela Bhaskar/The New York Times)

ロシアの扇動的な偽情報作戦が激化している。ロシアの国防省と外務省は、アメリカの国防総省がウクライナの生物兵器研究所に資金提供しているとする虚偽の声明を発表。次いで中国の外交官と国営メディアも、北京での記者会見、記事、ソーシャルメディアの公式アカウントでこの陰謀説を繰り返した。

これに対しバイデン政権は異例の措置をとり、ロシアと中国が協調してプロパガンダキャンペーンを行っていると非難。こうしたデマを隠れみのに、ロシア軍がウクライナで生物化学兵器を使用してくる可能性に言及した。

ロシアと中国相手の情報戦に突入

「今やロシアはこうした虚偽の主張を行い、どうやら中国もそのプロパガンダを支援するようになった。ロシアがウクライナで生物化学兵器を使用する可能性や、それらを使った偽旗作戦を警戒する必要がある」。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は3月9日夜、こうツイートした。「それが明白なパターンだからだ」。

サキ報道官は、ロシア側の非難を「荒唐無稽」と呼び、アメリカは「いかなる場所でも、そのような兵器を開発したり、保有したりしていない」と述べた。国務省は、ロシアの主張を「まったくのナンセンス」とし、ウクライナに生物兵器研究所は存在しないと指摘した。アメリカの情報機関の幹部も10日、議会上院の公聴会でこれらの点を繰り返した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナで軍事的猛攻を続ける中、バイデン政権とヨーロッパ、およびアジアの同盟国は、ロシアと中国を相手とする情報戦に巻き込まれている。

この戦争のさなかに中国がロシアの偽情報を増幅していることに、西側の政府関係者は懸念を募らせている。中国が有する外交力とサイバー能力は強力だからだ。両国による偽情報を研究するアナリストによると、中国政府とロシア政府がこれほどの規模で陰謀論を増幅し合うのは今回が初めてだという。

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