ロシアと中国が奏でる「化学兵器使用」への序曲 陰謀論拡散のかつてない連携プレー

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「ロシアのプロパガンダキャンペーンのうち、中国からこれほどの支援を受けたケースはほかに思い当たらない」。ワシントンを拠点とする非営利組織「民主主義を守るための同盟」のシニアフェローで、中国、ロシア、イランの偽情報を追跡しているブレット・シェーファー氏は「これほど大規模なものは目にしたことがない」と話した。

中国政府とロシア政府の緊密な連携があらためて明らかになった格好だ。プーチン氏が2月4日に北京で中国の習近平国家主席と会談した際、両国は互いの友情に「限界はない」とする5000語の共同声明を発表。西側情報機関の報告によると、中国はちょうどそのころ、ロシアに対し北京冬季オリンピック終了前にウクライナに侵攻しないよう要請したとされる。

アメリカ政府高官は昨年11月から、駐アメリカ大使や外相を含む中国政府の高官と密かに会談。プーチン氏がウクライナ周辺に軍隊を集結させていることを示す情報について話し合い、戦争を起こさないようロシアに働きかけてほしいと説得を試みたが拒絶された、とアメリカの政府高官らは明かしている。

ウクライナ侵攻が始まって以降、中国はロシアに公然と味方。紛争の原因つくったのはアメリカだと非難し、北大西洋条約機構(NATO)の拡大に対するプーチン氏の不満を強調する一方で、人道危機に対する懸念を表明するのを基本路線としてきた。8日、フランス、ドイツの首脳とオンラインで会談した習氏は、こうした中国の基本的立場を繰り返し、ロシアが戦争を始めたとは言わなかった。

「戦狼」中国の情報操作はロシアと瓜2つ

中国は記者会見や国営メディア、外交官のソーシャルメディアアカウントを通じ、激烈なレトリックとロシアの偽情報に根差した陰謀論を使って状況をあおろうとしていると、アメリカの政府関係者や研究者らは指摘する。

8日、習氏がヨーロッパの指導者たちと会談しているとき、中国外交部の趙立堅報道官は北京での記者会見でウクライナの生物化学兵器問題を取り上げ、「ロシアは軍事作戦中に、アメリカがこれらの施設を使って生物兵器計画を進めていることを発見した」と断言した。趙氏は多くの中国国民から、猛烈に愛国的な「戦狼」外交官とたたえられる人物だ。

「アメリカはウクライナに26のバイオ研究所とその関連施設を有しており、アメリカ国防総省がこれらを完全にコントロールしている」と趙氏は述べた。「ウクライナでは、危険な病原体はすべてこれらの研究所に保管されなければならず、アメリカ側がすべての研究活動を主導している」。

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