もしFRBの利上げが0.25%でも喜んではいけない 15~16日のFOMC後の市場はどう動くのか?
実際、2月の雇用統計では、時間当たりの賃金こそ前月比ほぼ横ばいと、予想を下回ったものの、前年比では5.1%の上昇と、依然として高いペースでの伸びを維持しており、インフレ圧力が弱まったと考えることはとてもできない。また10日発表の2月の消費者物価指数も、前月比0.8%、前年比では7.9%上昇と、やはり高い伸びを確認する格好となった。パウエル議長は今ごろ、議会証言で0.25%の小幅利上げを行う意向を示したことを、少し後悔しているかもしれない。
原油の高騰が、さらなるインフレにつながる?
パウエル議長にとってさらに悩ましいのは、商品市場の高騰に歯止めがかからなくなっていることだ。特に原油と小麦の上昇はすさまじい。原油は一服感こそあるものの、一時1バレル=約130ドルと、1バレル=147ドルの史上最高値をつけた2008年以来の水準にまで上昇した。小麦もやはり一時1ブッシェル=13ドル台と、アラブの春と呼ばれるアラブ諸国の民主化運動の引き金となった2008年の価格高騰時の高値を抜ける水準まで一気に値を切り上げている。
こうした商品市場の急騰は、今後数カ月の間に消費者物価指数などを一段と押し上げる可能性が極めて高い。通常ならここまでの価格高騰が起こると、需要もそれなりに減少、価格の抑制要因となるものだ。だが、今回上昇の主役となっているエネルギーや食品というは生活必需品であり、価格が高いから使わないというわけにもいかず、需要もすぐには落ちないかもしれない。
しかも、タイミングの悪いことに、今後は夏のドライブシーズンに向けて製油所が稼働率を高め、ガソリンの生産を増やしていく中で、ガソリンを中心にエネルギー価格が上昇しやすい時期に入る。ガソリン価格高騰につれて、インフレが一段と進む可能性は極めて高いと見ておいたほうがよい。「今年中にインフレが落ち着きを取り戻してくる」との議長の見通しが再び外れてしまうことも、十分にありうるのではないか。
さて、話をFRBの金融政策に戻そう。今回0.25%の小幅利上げにとどめるということは、足元の商品市場高騰を落ち着かせるには不十分であり、今後は物価が市況高騰の影響をモロに受けてしまう可能性が高い、ということでもある。
今後インフレがさらに進むなら、「3月時点での議長の判断は間違っていた」と受け止められることになる。そうすると議長はFRBへの信頼を取り戻すためにも、5月のFOMCで0.5%の大幅利上げを打ち出さざるをえなくなるのではないか。バランスシートの縮小に関しても、予想より早いタイミングで開始する可能性が高まりそうだ。こうした一連のFRBの引き締め姿勢の強化が、市場で新たな売りを呼び込むきっかけとなっても、何ら不思議ではない。
新型コロナウイルス禍によるサプライチェーンの混乱や労働力不足の問題で経済活動が鈍化する可能性も指摘されているところへ、今回ウクライナ問題が深刻化していることで、景気の先行き不透明感が急速に高まっていることにも十分な注意が必要だ。
この先、景気の回復ペースが鈍ってきたとしても「FRBの金融緩和」という下支えに期待することはできないという状況の持つ意味は、思ったよりも大きなものとなるだろう。前回の商品市場の急騰局面(2008年)の直後にリーマンショックが起こったことも、決して忘れてはならない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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