(第39回)かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落


 この変化が生じたとき、日本は韓国、台湾のメーカーに太刀打ちできなくなったのだ。これらの国・地域の賃金は日本より低く、それゆえ低価格の製品を作ることができる。サムスンは、それに加えて、巨額の設備投資によって製造単価を引き下げた。なお、新興国メーカーが伸びたのは、為替レートの影響もある(もっとも07年までは円も安くなったから、日本のメーカーも為替レートの恩恵を受けたわけだ)。

MPU(PCで用いられる超小型演算処理装置)は、半導体のチップだが、そこに書き込まれている計算回路の設計が重要な意味を持つ。インテルは、すでに80年代にDRAMから撤退し、MPUに特化した。

DRAMのように製造工程が重要な製造業において日本は強いが、MPUのようにソフトウエア的要素が重要な製造業では日本は弱い。つまり日本は、ブルーカラー的製造工程には強いが、ホワイトカラー的な設計過程では弱いのである。

こうして、日本は低価格製品が必要となったDRAMで新興国に敗れ、ソフトウエアの比重が高いMPUでアメリカに敗れた。結局、日本が強かったのは、基本的な技術が確立されている高性能製品を、効率よく生産することだったのだ。

ところで、以上で述べたことは、半導体産業に限ったことではない。同じことが、今後自動車について起こる可能性がある。従来のガソリン車やハイブリッド車は機械的に複雑な製品であり、こうした製品の製造過程での「すり合わせ」に日本は強い。しかし、今後主流になる可能性がある電気自動車は、これらとは異質の製品だ。それはバッテリーなど個々の部品には先端技術が必要とされるが、機械的には単純な製品なのである。そして個々の部品に関しては、シリコンバレーなどのベンチャー企業が強い。したがって、MPUでインテルに負けたのとの同じことが、自動車でも起こる可能性がある。

他方で、新興国での需要は、低価格車が中心だ。この面では、PC用のDRAMで韓国や台湾に負けたように、中国の自動車メーカーに負ける可能性がある。

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