ビームスが「VRから店舗への送客」に成功したワケ 人が人を引き寄せることで「物が売れる」構図

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リアルファッションをそのまま再現した、ビームスのオリジナルアバター。前回のPUI PUIモルカーほどは販売が振るわなかった。アバターを介して好きな自分になれるメタバース空間の、現時点でのファッショントレンドはゲームやアニメ寄りのものが多いそうだ(画像:ビームス)

オリジナルアバターの売り上げはふるわなかったが、次につながる知見を得られたビームス。実はこの3回目の参加で、大きな目的を果たすことができた。

「語学スキルがある、コミュニケーション力が高いといった方を前回は40人、今回は44人動員して、毎日毎日異なるスタッフがVRゴーグルをつけて接客をしていました。そこから見えてきたのが、メタバースでの接客は文字によるSNSでのコミュニケーションと違って、デジタルなのに温度を感じる接客が可能だったことです。スタッフとのコミュニケーションから『今度お店に行くよ』という会話につながったりとリアルとバーチャルの相互送客も実現しました。これが、バーチャルマーケット参加3回目にして大きく伸びたところだなという実感があります」(木村さん)

「基本的に2人のスタッフを配置しています。1人だと孤独でモチベーションが続かなくなってしまいそうなところでも、お互いに話しながらやることでわからないことを相談できるし、慣れも早い。このVRChatの習得の速さは、複数名投入していることがメリットになったのかなと感じています」(木下さん)

今後の展開次第で重要な戦力となる

「アバター姿というのもあるのでしょうけど、ユーザーのみなさんがすごくフレンドリーなんで距離の縮まり方がまたリアルとも違うんです。だからデジタルなのに密な関係性ができていくのを生で見ていると、メタバースコマースの伸びしろはまだまだあるんだと思います」(木村さん)

リアル店舗とも、ブラウザで見るECサイトとも、SNS上でのコミュニケーションとも違うメタバース空間内での接客経験を積んだスタッフが数十人もいるという事実は、驚くべきことだ。バーチャルマーケット5、バーチャルマーケット6、バーチャルマーケット2021は主にVRChatで行われたが、アバター越しの接客経験はほかのメタバースサービスでも通用するものなので、今後の展開次第で重要な戦力となることが想像できる。

まだメタバースにおける小売りショップ展開の前例が少ない現時点において大きな経験を得られたのは、ビームスにとって最大の財産となるのではないだろうか。

武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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