欧州にもある「並行在来線」、日本とどう違うのか 高速鉄道開業後も在来線特急維持が目立つ理由
JR九州は2022年2月22日、西九州新幹線の開業日を9月23日と正式に発表した。同新幹線は長崎と武雄温泉(佐賀県)間約66kmを約30分で結ぶ。これにより博多―長崎間の所要時間は30分短縮され、1時間20分程度となる予定だ。
ただし、博多―長崎間の時間短縮といっても、途中の武雄温泉―新鳥栖間はまだ整備方式のメドも立っていない。したがって博多から長崎へ行く場合は武雄温泉で在来線から新幹線に乗り換えなければならない。現時点で言えることは、同区間のメドが立たない限り、博多―長崎間は乗り換えなしの直通列車がなくなるということだ。便利になるはずの新幹線が、下手すると負の遺産になりかねない。
高速鉄道のパイオニアである東海道新幹線がこの世に誕生して58年、その後ヨーロッパを中心に高速鉄道が次々と開業してきたが、常に付きまとうのは並行する在来線とそこを走る列車の扱いで、これは日本だけの問題ではない。
フランスは並行在来線の特急廃止
フランスでは、高速新線LGVが開業するたびに、並行する在来線の列車を廃止したり、区間短縮したりして、新線区間より先へ行く場合はすべて途中で乗り換えさせるというやり方を採用してきた。
もっとも、フランスの場合はパリ一極集中が際立っていることから移動はパリ対他市町村という需要がほとんどで、地方都市間の移動があまりない。このため、並行する在来線の列車を削減してもあまり大きな影響がないケースが多かった。LGVの開業後も在来線優等列車がそのまま残されたのは、パリ―トゥール間などわずかな例に限られる。
象徴的だったのは、伝統の夜行列車「オリエント急行」の区間短縮と、その後の廃止だった。これは日本でも有名な観光列車とは別に、通常の営業列車としてパリ―ウィーン間を結んでいた列車だ。だが、2007年のLGV東ヨーロッパ線開業により、フランス国鉄は同列車のパリ―ストラスブール間の廃止を決定。同区間に残っていた在来線昼行特急とともに、パリへ行きたい乗客にはTGV乗車を強要した。
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