欧州にもある「並行在来線」、日本とどう違うのか 高速鉄道開業後も在来線特急維持が目立つ理由
当然ながら、利用客の減少はますます加速し、伝統の列車は2年後の2009年にあっけなく終焉を迎えた。
皮肉だったのは、その後に環境問題がクローズアップされ、フランス国内の在来線にTGVとは別の長距離列車が運転されるようになり、夜行列車も次々と復活したことだ。
そして2021年、かつてのオリエント急行のルートをそのままなぞるように、オーストリア鉄道による夜行列車「ナイトジェット」がウィーン―パリ間で運行を開始した。このようなことが可能なのは、日本と異なり鉄道インフラを国(もしくはそれに準じる機関)が保有しているため、運行事業者がその気になればいつでも路線を開設したり復活させたりするのが可能ということ、また在来線と高速鉄道の軌間が同じで直通が可能ということも関係している。
イタリアでは在来夜行廃止に猛反発
同じような事例はイタリアにもあった。イタリアは南部の失業率が高いことから北部の工業地帯へ出稼ぎに行く労働者が非常に多く、その輸送のために昔から南北を結ぶ夜行列車が多数運転されていた。毎日何本もの夜行列車が運行されていたほか、週末には臨時列車も走るほどだった。
そのイタリアにも高速列車が誕生し、それまで6時間以上かかっていたミラノ―ローマ間は、半分以下のわずか3時間弱で結ばれるようになった。
高速列車の利用状況は好調で、気をよくしたイタリア鉄道はミラノ―ボローニャ間の高速新線が開業した2008年に大胆な改革を行った。南北を結ぶ夜行列車の大半を廃止し、残った列車も北限をボローニャとして、高速列車へ接続させるダイヤを組んだ。
「古い時代の鉄道は終わった」と高らかに宣言したのだが、利用客からは大ブーイングとなった。故郷まで乗り換えなしで安く行けるのが魅力だったのに、運賃が高い高速列車に乗せられた挙げ句、途中で乗り換えさせるとは何事だ、という怒りの声が上がったのだ。
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