欧州にもある「並行在来線」、日本とどう違うのか 高速鉄道開業後も在来線特急維持が目立つ理由
結局、わずか1年で南北間の夜行列車は復活し、現在も毎日運行されている。また、並行する在来線にも優等列車を運行している点がフランスと異なる。パリ一極集中のフランスとは異なり、中小規模の都市が点在し一定の需要が見込めると判断され、優等列車の設定に踏み切ったと言える。
日本の場合、整備新幹線の並行在来線は原則としてJRから経営を分離し第三セクターなどへ移行するが、上下分離化されたヨーロッパの場合は鉄道施設をインフラ会社が保有しているため、在来線の列車は減便こそあっても、そのまま残されるケースが多い。
例えば、複雑に路線が入り組むドイツのミュンヘン―インゴルシュタット―ニュルンベルク間は、インゴルシュタット―ニュルンベルク間に高速新線が完成したことで、高速列車ICEの大半が高速新線経由となったが、在来線にも優等列車が運行されている。もちろんローカル列車は維持され、経由地の違う複数の列車が直通運転をしている。中にはICEと同じ高速新線経由の列車も設定され、ローカル列車ながら最高時速190kmでの運転を行っている。
単純比較はできないが…
このように、高速新線が完成したことで在来線を切り離すのではなく、それを活用して多様な運行パターンを構築しているのがヨーロッパの特徴と言えよう。これはやはりインフラの所有者と線路幅の問題が非常に大きく、新幹線と在来線でまったく規格が異なる日本にこの方法を当てはめることは難しい。
西九州新幹線の完成後、並行する在来線のうち肥前山口―諫早間は上下分離され、インフラは佐賀県・長崎県が設立する一般社団法人が保有、運行は新幹線開業後23年間はJR九州が行うことになっている。
だが、武雄温泉―新鳥栖間のメドが立っていない現状では、九州最大の都市である福岡と長崎を直結する列車が事実上廃止されることになる。新幹線が全線開通するまででも、直通の特急列車をわずかでも維持することは考えられなかったのだろうか。
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