「5G対応iPhone SE」が登場すると予測できるワケ アップルが新製品オンラインイベントを告知

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いずれのモデルにしても、デザインやカメラなどの基本的な性能に変化はないと考えられるが、チップが最新のものに置き換えられることで、プロセッサーの性能で1.5倍、グラフィックスは2倍の性能向上が期待できる。またバッテリー持続時間の向上や、画像処理と機械学習処理によって、写真や動画の画質の向上も見込むことができる。

iPhone SEは価格帯として、ミドルレンジのスマートフォンに位置するため、Androidスマートフォンならもっと安い価格の製品を選ぶことができる。しかし同価格帯のスマートフォンとしては、驚異的な性能を実現することになるだろう。

成長戦略と製品供給対策に注目

前述の通り、スマートフォン市場は5Gへの移行という大きなチャンスで盛り上がりを見せている。2020年に2億1200万契約だった5Gは、2024年までに10倍を上回り、2026年には33億5200万件に達すると予測されている(Statista調べ)。

そうした移行の中で、15%というiPhoneのマーケットシェアを維持していくことは、iPhoneの継続的な成長の大きな根拠となり得る。そうした成長予測への実感を持ってもらうためには、iPhoneラインナップ全体の5G化を早期に実現する必要があるのだ。

加えて、アップルは5Gへの対応のために、訴訟していたクアルコムと和解した。その和解前の製品ラインナップには、インテルのモデムが用いられており、現在販売中のiPhone SE(第2世代)やiPhone 11も含まれている。

インテルはすでにスマートフォンモデム部門を閉鎖し、アップルが部門ごと買収している。ただしアップルがスマートフォン向けモデムを自社設計しているわけではないため、サプライヤーの整理を急ぐ必要がある。

同じような理由で、現在販売中のiPhoneで用いられているチップのバリエーションを減らすことも必要となる。iPhone SEとiPhone 11にはA13 Bionic、iPhone 12にはA14 Bionic、iPhone 13にはA15 Bionicと、iPhone向けだけでも3種類のチップが用いられている。

今回iPhone SEやiPhone 11を5G対応のクアルコムモデムに変え、A15 Bionicへとアップデートし、さらに廉価版の10.2インチiPadをA14 Bionicに変更することで、主要製品をすべて5nmプロセスのチップに置き換えることが可能になる。

アップルは自社設計のチップを台湾のTSMCに委託して製造しており、7nmプロセスのチップを廃止していくことで、新しいチップの供給力を強化することもできる。

3月9日のイベントに登場する新製品については、追ってお届けしたい。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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