「クールジャパン」、本来は何をするべきか カンヌ「MIPCOM2014」で聞いた生の声

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これは放送広告の価値が高まるとともにスポンサー料も高騰。少子化の影響で玩具メーカーをはじめとする子ども向けの市場が伸び悩み、プライムタイム向けに予算をかけたアニメ製作が行えなくなったためだ。このため多くのアニメが深夜枠へと移動。高価なDVD/ブルーレイパッケージ販売や関連商品と組み合わせた大人向けコンテンツに変化したことが理由だ。

「世界的に見て、子ども以外にアニメを放送している局は(衛星放送の専門チャンネルを除けば)ありません。日本のように大人も楽しめるアニメを放送している国は、おそらく他にありません。つまり、放送用にアニメを調達しに来る探しに来るバイヤーにとって、深夜枠などで放送されている日本アニメには興味がないんですよ」(斎藤氏)

加えて現時点では、作品全体の質という点で日本アニメを凌駕してはいないものの、韓国・中国のアニメ品質が育ってきているという。日本人アニメーターが業界から去り、人手不足や予算不足から海外アウトソースを進めた結果、韓国、中国にアニメ製作のノウハウが流出。品質を高めようとするほど海外アニメーターが育ったためだ。

斎藤氏は「アニメ作品は企画力や演出力なども重要で、制作全体を見ると歴史ある日本にはまだ敵わない」というが、「いずれは差がなくなると考えるべき」と指摘する。他の輸出品目と同様、日本の製作者は市場が大きく文化的にも適応しやすい日本市場に向けてコンテンツを制作する。

しかし、国内市場が小さい韓国などは、海外販売を睨んだ企画やキャラクタ、ストーリー設定にできる上、ハリウッド系のCGアニメからも制作ノウハウを学んでおり、輸出面では有利との指摘もある。

映像コンテンツは日本ブランドプロモートの踏み台

日本コンテンツにも詳しいハリウッド系企業のあるバイヤーは「日本アニメの製作費用は1話あたり1000万円程度で、ここに監督や脚本化など含め200人ぐらいが関わっている。末端のアニメータは食うや食わず。監督にしてもOVA(オリジナル製作のアニメーションビデオ作品)制作を任され、2000万円ぐらいのギャラを渡されたとしても、構想から制作、公開まで含めて2年以上をかけることもあり、あまり儲からない。才能あるクリエイターが、アニメからゲームやモバイルコンテンツに流れたのも一因」と指摘する。

細かな状況は異なるものの、コミックに関しても少子高齢化という日本社会の影響が市場環境の変化に色濃く出ているのは同じだ。ではクールジャパンのジャパン・ポップカルチャーの活性化、輸出とは何なのだろうか?

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