「クールジャパン」、本来は何をするべきか カンヌ「MIPCOM2014」で聞いた生の声

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映像コンテンツを販売するセールス担当者たちが口を揃えるのが、”クールジャパン予算は、映像制作の現場への実入りとはほとんど関係ない”という話だ。

「ご存知のように、クールジャパンは日本のコンテンツだけでなく、伝統工芸品や食品、ファッションなどのプロモーションを通じて、日本のイメージアップや輸出拡大を狙うものですが、コンテンツそのものの輸出拡大は、ほとんど考慮されていません。参加企業のファッションブランドなどを海外で浸透させるため、プロダクトプレースメントを映像作品内で行うなど、映像作品を通じて海外進出を行う手助けという話ばかりで、実入りはほとんどありません」(あるテレビ局の海外販売担当)。

前述したように、90年代から伸びていないアニメ輸出を増やすことで国益とするという国家戦略は成り立たない。母数となる売上げが少ないためだ。しかし一方で日本の映像作品を見てくれる世代、オーディエンスに対しては、ブランドを作るための広報用メディアとしてアニメや日本ドラマを使おう、ということだ。

クールジャパン予算については、多くの思惑が絡み合っており、近視眼的な評価は正しくないという意見もあるだろう。クールジャパンは特定業種のみに偏ったものではなく、日本全体のイメージアップを目的としたものだからだ。しかし、映像作品に関わるひとたちは自分たちがフェアに扱われていない、業界発展にも寄与していないと考えている。

「日本ドラマは韓流に完敗」は本当か

一方、かつてはアジアで日本のイメージアップにも貢献し、人気のあった日本製ドラマの現状はどうか?というと、こちらも評判は散々だった。

前出のハリウッド系バイヤーは「日本人が演じている時点で、欧米からの買い付けはない。マーケットはアジア向けに限られているが、たとえアジアの主要国すべてに販売したとしても、日本で得られる利益の数分の1にしかならない」と指摘した上で、「たとえば、ベトナムでの1時間枠1話あたりの放映料は日本ドラマが1000ドル程度。韓流ドラマなら3000ドルは取れる」と話した。

しかし、これには異論もある。TBS放送・海外事業部長の林慎太郎氏は「少なくとも、ウチは1000ドルでは出していない。どのぐらいかは、そのコンテンツの善し悪しによる。しかし昨今、韓流ドラマの放映料が高騰して日本ドラマを大きく上回っているのは事実」と話した。

実はベトナムは、韓国のイメージ向上を狙ったキャンペーンが成功したもっとも直近の事例とのことだ。韓流ドラマは国家によるコンテンツ輸出支援を受け、アジア諸国に「無料に近い値段」(林氏)で販売される。

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