浦沢直樹が語る「日本のマンガが世界最強」の理由 ほかの国には案外ない「感情表現の使い方」
-そんなマンガ文化の歴史の中で、今はどんな時代なのでしょうか。
浦沢 デジタルですね。相当漫画界を変えてきています。(画材の)スクリーントーンがなくなったら引退するというアナログ派もいれば、紙に書いたことがないという人もいる。タブレットでは絵が納まりきらないので、読む道具をどうするかという過渡期でもある。坂本眞一さんの作画風景なんか、映画館で見るクオリティーのものをデジタルで書いている。漫画を映画館で観賞する時代が来るかもしれないとか、とんでもない可能性が秘められていると思います。
-今まで番組に登場した漫画家さんの中で衝撃を受けた人は。
浦沢 書き方って本当に人それぞれで、萩尾望都さんのペンの持ち方っておかしいんですよ。先っちょを持ちすぎて、ネコが爪でひっかきながら書いているように見える。あれはおもしろかったですね。藤田和日郎さんのホワイトの使い方も、4回5回6回とあんなに塗ったら経年劣化にもたない。何度も何度も消すというのはデジタルのやり方で、それをアナログでやっているおかしさが作風に出ているんです。
「目を書くのが丁寧になったかもしれない」
-ご自身の作風にも影響はありますか。
浦沢 「漫勉」のおかげで、目を書くのが丁寧になったかもしれない。少女漫画系の方が「瞳が命」って感じで書かれていて、大事にしなきゃいけないと思いました。ちばてつや先生が手の下に敷くペーパータオルは、すごくいいです、あれ(笑い)。
-今回のシリーズでは、「弱虫ペダル」の渡辺航さん、「ケルン市警オド」の青池保子さん、「パンゲアね」の新井英樹さんの3人が登場します。
浦沢 同じ職種とは思えないくらい、マンガというジャンルがいかに多岐にわたっているかがよく分かります。ペンスピードも、渡辺さんは「漫勉」史上最速。新井さんは最も遅いかもしれない。青池先生はキャリア50年以上のレジェンドであり、新井さんは20年ほど引きこもっていたとか。それぞれの生活の中からああいう作品がにじみ出てくるんだなとよく分かると思う。
-番組を通して、マンガに対する考え方は変わりましたか。
浦沢 1人で書いていると、僕1人だけが大変な思いをしていると思ってしまいますが、たくさんの先生にお会いして、みんな大変なんだと励みになります。みんなすごいなあ、って。
(梅田恵子)
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