アメリカのインフレ率が鈍化するこれだけの証拠 日本株が再度上昇するには何が必要なのか

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これは将来的に金融引き締めの度合いを緩めるための伏線かもしれない。年央にかけてインフレ率が落ち着く気配をみせると、過度な金融引き締めに警鐘を鳴らすFRB高官が出現し、流れが変わるのではないか。

そのうえで日本株はどうだろうか。筆者は半導体製造装置の受注動向を示す機械受注統計で示される「電子計算機等」の受注動向に注目している。旺盛な半導体製造装置の需要を映じて、この系列は増加が著しく、水準は前回のシリコンサイクルのピークをはるかに上回る水準にある。

半導体そのものがシェアを失っても、日本の製造装置産業の競争力はなお健在であることを象徴している。ただし受注額の伸び率はさすがにピークアウト感が認められ、これが日本株の重荷になっていると考えられる。実際、「電子計算機等」の受注額と日経平均株価は共に下向きのカーブを描いている。

コロナ感染改善後の個人消費の回復を注視

半導体製造装置の受注動向は、電子部品や化学品(半導体部材)など広範なIT関連財と関係を有する。半導体製造装置を直接手掛ける企業の存在感は、必ずしも株価全体の方向感を決めるほど大きくはないが、関連企業を含めると日経平均に大きなインパクトを与え、結果的に両者が連動すると考えられる。

半導体製造装置の受注急増が一服する局面において、株式市場では「広義半導体」関連銘柄の業績拡大期待が膨らみにくく、株価指数の牽引役が不在となる。中長期的にみて広義半導体が有望セクターであることに変わりはないが、現在の株価指数を持ち上げるにはエンジンの出力が足りない印象だ。

そうなると、日本株を支える役割として内需の重要性が増してくる。当然の結論であるが、今後、広義半導体銘柄の業績ダウンサイドリスクが高まったとしても、個人消費が回復し非製造業の業績ダウンサイドリスクが和らげば、株価指数は底堅く推移する。感染状況が好転した後、多くのマクロ指標を観察し、個人消費の回復軌道を注視したい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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