西九州新幹線、佐賀県「フル規格」猛反対の本質 フリーゲージトレインの技術めぐり国と激論

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委員会は2015年12月までに、不具合の原因は最高時速260kmでの走行試験時に生じたことを突き止め、摩耗対策を講じた上で台車の高速回転試験を行った結果、2016年11月に「摩耗対策に一定程度の効果は認められる」と発表。高速走行安定性への影響を検討したうえで、問題がなければ2017年6月頃から耐久走行試験を再開させる意向だった。

軌間可変機構を備えたFGT3次試験車の台車(編集部撮影)

2017年7月に行われた技術評価委員会では「摩耗対策が相当程度の効果を有する」と一歩踏み込んだ表現になったが、摩擦そのものがなくなったわけではなく、耐久走行試験の実施の前にさらに新たな対策を講じその効果を確認することが必要とされ、先送りとなった。

2018年3月27日、新たな対策を検討した結果、「特に問題はない」とされたものの、まず対策の効果を検証する試験を行う必要があるとして、やはり耐久走行試験は先送りに。その3日後の3月30日、国交省は与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会に対して、FGT、フル規格、新幹線の形態の1つであるミニ新幹線の3つを比較した場合、フル規格の整備が最も投資効果が高いと報告した。

5月15日には近畿日本鉄道が「国交省と相談しながらFGTの開発を推進する」と発表し、在来線同士での直通運転という新たな活用法に向かって動き出した。

国は「開発断念せざるをえない」

そして7月19日、与党のプロジェクトチームは、「最高時速が270kmにとどまり山陽新幹線への乗り入れが困難である」として「FGT開発を断念せざるをえない」とする中間取りまとめを発表した。石井啓一国交相(当時)は8月28日に今後のFGTの技術開発について「軌間の異なる在来線間の直通運転を想定して技術開発を続けたい」と述べ、新幹線を前提としたFGT開発は終了した。

一連の経緯について鉄道局技術開発課の平石正嗣技術開発室長も説明し、「なかなか順調に進んでこなかった」と振り返る。

2月10日に国交省で開いた「幅広い協議」の第6回会合(記者撮影)

これに対して、山下部長は「困難とはいうが、確実に前進しているという印象もある」と言う。例として挙げたのが、皮肉にも国が2018年3月30日の与党検討委に示した資料だった。そこには、FGT開発の想定スケジュールが記載されており、2019年度中に耐久走行試験を開始し、2021年度からFGT量産先行車、2024年度から量産車を製造、「技術開発が順調に推移した場合、西九州ルートへの導入は2027年度半ばとなる見込み」と書かれていた。今回、国が県に示した説明資料にこのスケジュールに関する言及はなかった。

国は「何千億円のコストをかけ、何十年もかければできるかもしれないが、しかるべき時間とコストで開発するのはむずかしい」と第4回の協議で主張している。しかし、山下部長は「いつできるかわからないということはない。新たな対策が示され、あとわずかで完成するところまで来ているから具体的なスケジュールを示したのではないか」と譲らない。

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