「日本を過小評価する」日本人に伝えたい国際評価 元駐米大使と国際記者が語る「世界情勢の見方」
例えば、中国をにらんだ日本とアメリカ、オーストラリア、インドの安全保障の枠組みのクアッドなどで進めている「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific)」はバイデン政権の外交政策の柱になっていますが、もともとは日本がつくり、提唱した構想でした。日本の国力や信頼度、人材の豊かさを考えると、環境やサイバーなどグローバルな課題の解決や、国際社会の安定のために構想力を今後も発揮できるはずです。
若い志を後押しする
田中:日本は諸外国と比べても国民のアイデンティティー、まとまりが強くて、災害などの危機において示す助け合いの動きは世界でも驚きをもって報道されてきました。若者の社会貢献の動きも多く見られますが、公務員ではキャリア官僚を目指す志望者が減っているようです。
杉山:私は早稲田大学で今、教員として教えていますが、社会のため、公に貢献したいという若者たちの思いはほかの世代やほかの国々に比べて決して劣っていないと思います。それに、社会に貢献する職業は公務員だけではまったくありません。若い人々の思いをうまく実現までつなげていくために、後押しができたらと思います。それに、外交官も含めてですが、世界で活躍する仕事の面白さも伝えていけたらと願っています。
田中:杉山さんと初めてお会いした時にはすでに大学で週末に国際法を非常勤で教えていて、大学教育について語っていたのを思い出します。本業で多忙を極めている中でも長年、営々と後進を育てようとされてきたわけで、その姿勢にはいつも感銘を受けていました。
杉山:さまざまな人との出会いや運に恵まれて、本当に良い外交官人生を送ることができました。今は学生たちへの指導のほか、書こうと長年思っていた国際法の本の執筆に当たっています。4月にも信山社という出版社から『外交交渉と国際法-序論』というタイトルの本を出す予定です。アカデミックな内容ですが、自分の過去の外交交渉の実体験や知識を基にした本にしたいと思っています。
田中:私もこれまで世界のさまざまな国で生活して、自分なりに見えてきた国際情勢の姿を、できるだけ日常会話のスタイルで広く理解されるような形で伝えたいという思いで今回の本を書きました。
特に10代にわかってもらうことが大事だと思い、13歳の次男にも原稿を読んでもらい、アドバイスを受けました。40代前半の時から大学での授業を持つなど、ボランティアのような形で長年後進の指導に尽力していた杉山さんにならおうとしたわけです。国際関係は専門家しかわからないものではないはずだという思いもありました。
杉山:大変な労作で、まさに今の日本に求められている本だと思います。難解なことを易しい言葉で説明するのは、物事を本当に理解していなければできないことです。これは一見、簡単に見えて、とても難しいことです。簡単なことを説明するのに難解な言葉を使う人が散見されるなかで、このような本が出てきたのは意義深いことだと思っています。
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