日本人の間で進む「潔癖を求める社会」のリアル 「世の中をきれいに」という漂白化の行き着く先

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いまヒーローものでは、描かれる暴力シーンもせいぜい学校の学年主任が止められるレベルだ。誰も大々的な暴力シーンを求めていない。マンガで『ワンピース』は敵も含めて友達にしてしまうし、『鬼滅の刃』では宿敵だったはずの鬼が実はかつては善人だったのが丁寧に描かれる。そしてそれが世間から求められている。

言葉は悪いが不潔な中年男性は、マンガにすら出てこない。いまもっとも尊敬されている上司が『呪術廻戦』の清楚な外観の五条悟であるのは示唆的だ。

私は経営コンサルタントだがとくにサプライチェーンに特化している。これは他社との売買を中心に据える。モノを売る企業と、モノを買う企業がいる。このところ、モノを買う企業から面白い意見を聞く。

「他社の悪口を言う企業は信頼できない」と。

みなさんにも経験があるかもしれない。モノを販売しようとする企業が、よく、ライバル企業との比較をする。そのとき、ライバル企業や商品をボロクソにいう場合がある。自社が優位であると語りたいのはわかるし、以前は比較して悪口をいう方法が採用されてきた。しかし、現代の買い手からすると気持ち悪くて仕方がない。

もっといえば「なぜ他人をそんなに悪く言うのだろう」と逆に不信感が溜まっていくのだ。もしかすると、それまでは他社を引きずり下ろして、自社のみが上に登ろうとする態度は頼もしく思えたかもしれない。それが現在、逆になろうとしている。

将来の消費者の漂白化

再び個人的な話だが、私は職業柄、できるだけ小学生の息子の友だちとも触れ合うことにしている。それは子育てとかの理由ではなく、彼らの流行や興味を知りたいという功利的な理由による。

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