金融政策の限界を素直に認めたラガルドECB総裁 需要が低調なら「インフレを潰す」ことにリスク

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ラガルドECB総裁は、ユーロ圏のインフレ見通しと金融政策見通しはFRBと異なることを明確に語りました(写真:Bloomberg)

2月14日、ラガルドECB(欧州中央銀行)総裁が欧州議会本会議で講演を行った。その内容が興味深いものであったので、紹介しておきたい。毎年4月にECB年次報告書の公表に際し、ECB総裁は欧州議会に説明を行うことが恒例である。ちなみに、欧州議会の経済通貨委員会(ECON)に対してはECB副総裁が年次報告書の説明を行う。

ラガルド総裁は改めて「純資産購入の終了(the end of our net asset purchases)」と「利上げの時期(the lift-off date)」の間には「明白な順序(a defined sequencing)」が存在することを強調した。つまり、当面のECBウォッチにおいては、「拡大資産購入プログラム(APP)の終了後、いつ利上げするか」が重要ということだ。目下、市場が利上げの先行きに注目している点に関しては「時期尚早(premature)」であり、「すべての調整は漸進的にしか進まないこと(any adjustment to our policy will be gradual)」も強調した。

順序(sequencing)や漸進的(gradual)が「次の一手」を考える上での要諦であり、市場の一部で指摘される年4回利上げのような展開はやはり過剰な期待であろう。もっとも、ここまでは2月3日の政策理事会で提供された情報の確認にすぎない。

供給制約は金融政策では動かせない

今回、ラガルド総裁の講演で秀逸と感じられた部分ははっきりと供給制約由来のインフレは金融政策で対応できないと断じた以下の部分である。

’ in all our communication, we need to be open about what we can and cannot do as a central bank. For example, our monetary policy cannot fill pipelines with gas, clear backlogs at ports or train more lorry drivers’(すべての情報発信において、われわれは中央銀行として何ができて、何ができないのかに関し、率直になる必要がある。例えば、金融政策がガスパイプラインに天然ガスを充填することはできないし、港湾の積荷を一掃することもできないし、大型トラックの運転手を要請することはできない)

ECBは「インフレは一時的」との姿勢で一貫しており、上述の比喩を通じてその点を改めて説明した格好だ。2月3日の東洋経済オンラインのコラム『FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる』で紹介したニューヨーク地区連邦銀行のブログでも指摘されていたように、金融政策が供給制約由来のインフレ高進に効く理由はない。

金融引き締めによる縮小均衡という形でインフレ圧力を徐々に減らせるかもしれないが、ラガルド総裁の指摘のように、需要を締め上げること自体は直接的な解決策にはならず、ガス供給やコンテナ、トラック運転手が増えたりしなければ解決しない。ラガルド総裁が現在のインフレ高進の半分がエネルギー要因であり、あくまで一過性の現象と強調していることも、こうした事実認識と整合的だ。

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