「政府の教育データ一元管理」即炎上の残念な実態 成田悠輔氏と考える子どもデータベースの意義

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こうした異なるデータ群を横串で繋ぐのに欠かせないものがある。異なるデータに散らばった同じ個人の情報を繋ぐマッチングキー・個人IDである。IDに適任なのは、自治体ごとの住基コード、理想的には全国共通のマイナンバーである。

住基コード・マイナンバーのようなIDを用い、今はいろいろな部局・現場に散らばっている子どもの実態に関するデータを統合すること。統合データからかすかに聞こえる子どもたちのSOSを自治体が掴むこと。手遅れになる前に実態を掴みにいくこと。それが子どもデータベースの最大のビジョンになる。

この構想を実現するには、国が音頭をとらなければ乗り越えられない壁がある。

まず、法制度の整備が必要になる。例えばマイナンバーをIDとして利用するには、マイナンバー法を改正し、IDとしてマイナンバーを利用する用途を法律に折り込む必要がある。マイナンバー法改正の根拠となる新法(「子ども基本法」のようなもの)も必要かもしれない。税・年収データの業務目的外利用のためには、地方税法の改正も必要になる。

次に、デジタル庁が整備中の「ガバメント・クラウド」上に「子どもデータクラウド」的な場所を用意し、自治体がそれを利用してデータを保管できるようにすると便利だろう。

データや支援のムラや格差を減らす標準化

ここで強調しておくべきなのは、国・政府がデータを直接的に一元的に管理する必要は「ない」という点である。実のところ、政府の「教育データ利活用ロードマップ」もわざわざ赤字で「国が一元的に子どもの情報を管理するデータベースを構築することは考えていない」と記載している。

重要なのは、国への一元化ではなく、全国的にデータの規格を統一すべきところは統一し、データや支援の質に地域によるバラ付きが出ないようにすることだ。

そして、最後に国の役割として求められるのは、自治体がデジタル化して持つべきデータ・変数の一覧と標準形式を指定し、IDによる管理を促すことだろう。今は学校や自治体間でばらばらの記載方式になっているデータを国が主導して標準化すれば、転居への対応などで学校・自治体間が格段に連携しやすくなる。

冒頭に紹介した報道やその後の混乱からもわかるように、自治体によるデータ活用にはつねに炎上リスクがついてまわる。だからこそ、自治体が尻込みせずに取り組めるよう、国がガイドラインを設定することが有効だろう。

もちろんリスク管理も必要である。各データの管理者や責任者は誰で、誰がそのデータへのアクセス権限を持つのか。家庭からの同意はどのように取りつけるのか。不適切な目的にデータが流用されないように禁止項目をどう設定するのか。こういった問題を順に議論して片付けていく必要がある。

「政府による教育データの一元化」のような刺激的なキーワードにとらわれすぎると、賛成か反対かの二元論になりがちである。だが、必要なのはゼロイチの是非ではない。どんなデータを誰がどこまで保持し利用するのか、解像度と具体性を高めた議論である。

「データか人か」という二者択一ではなく、データと人の適切な連携により日本の子どもたちのどんよりした未来に少しでも光が射すことを祈る。

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