「政府の教育データ一元管理」即炎上の残念な実態 成田悠輔氏と考える子どもデータベースの意義

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そんなデータに基づくアウトリーチの先駆例として、埼玉県戸田市と認定NPOのLearning for Allの試みがある。彼らは、生活保護・就学援助・学力などの行政データに基づいてアウトリーチすべきハイリスク家庭の名簿を作成。

家庭訪問はもちろん公園や児童館などを通じた柔軟なアウトリーチ活動を自治体と社会セクターが連携して行う仕組みを作り出した。似た試みは大阪府箕面市などでも起きはじめている。

こうした試みを、部局の壁を越えたより横断的なデータを使って全国的な制度にできないだろうか。家庭や子どもの支援という業務の改善と拡張のための子どもデータの利用である。

子どもデータにはもう1つの、より長期的で汎用的な目的もある。広く保育・教育にまつわる制度や政策の質や効果を測定したり、個別最適化に活用したいという目的だ。

エビデンスに基づく政策(Evidence-Based Policy Making, EBPM)が叫ばれて久しいが、目論見通りそれが実現したという意見は寡聞にして知らない。エビデンス作りに不可欠なデータが足りないからというのがよく聞く理由だ。この穴を埋めるために子どもデータの出番である。政策評価のためのデータ利用と言える。

ゼロイチの議論には意味がない

こう考えてくると「子どもや教育のデータの一元化は是か非か?」というゼロイチの議論には意味がない気がしてくる。「データ」や「一元化」の意味次第でなんとでも言えるからだ。

上にあげたような社会的目的のために、どのようにデータベースを設計し、それが孕む危険やリスクをどのように管理していけばいいか、具体的に建設的に議論していく必要がある。

では、どのような子どもデータベースを作ればいいのだろうか? こんな見取り図が考えられる。

子どもや家庭が抱える困難をできるだけ漏れなく公平に掴むために重要なのは、部局・現場間の壁を超えて課題横断的にデータを追跡することである。

例えば家計(経済)の困難を掴むには、職業や世帯年収などがわかる税務データ(税務課管轄)が最も有効だろう。地方税法の規制などで税務データの利用が難しい場合には、生活保護・児童扶養手当・就学援助の受給(福祉・教育部局管轄)など間接情報で経済状況を察することも必要かもしれない。

家庭の困難はもちろん経済に限らない。健診受診歴・結果(福祉・教育部局管轄)に表れる身体の困難や、成績・全国学力調査データ(教育部局管轄)に表れる学習の困難、そして親・同居者の虐待通告(福祉部局・虐待対応室・児童相談所管轄)なども見過ごせない。

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