「脱炭素世界一」を目指す中国の超したたかな戦略 表の顔と裏の顔を使い分ける中国の思惑

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中国が掲げる一帯一路(Belt and Road)政策。2013年に中国の習近平国家主席が発表したこの構想は、アジアと西洋を結んだ古代の貿易ルートである「シルクロード:Silk Road」にインスピレーションを得ています。

シルクロードは、東洋と西洋をつなぐ歴史的な交易路であり、紀元前2世紀から18世紀の間、政治、経済、文化、宗教において互いの地域に、大きな影響を及ぼしました。中国は、一帯一路政策で、ユーラシア大陸全域にわたって21世紀の「新しいインフラ」を構築し、史上最大の統合された経済圏を構築することを目指しています。

新しいインフラとは、「通信:インターネット、AI、IoT」「エネルギー:再生可能エネルギー、蓄電池」「モビリティ:EV、FCV、ドローン」が融合し、脱炭素を実現したインフラです。

中国とEUの経済的利益が「一致する部分」

中国とEUでは、お互いの経済的利益が一致する部分があります。両者は非常に重要な貿易相手国同士であり、ユーラシア大陸を介して地理的に結ばれています。そして、21世紀の覇権をアメリカから奪取するということでも意見が一致します。

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中国とEUは、ほかの地域が脱炭素社会に移行するのを支援することや、グローバル市場での基準やルールづくりでも手を組む可能性があります。ヨーロッパ、アメリカ、中国を中心とした21世紀の主導権争いは、今後も続いていきます。

もう1つ見逃せないのは、世界の「成長の中心」がアジアに移ることです。2030年のGDPランキング予測では、1位中国、2位アメリカ、3位インド、4位日本です。2050年には、インドネシアも台頭し、日本のGDPを超えると予想されています。

とくにインドは、太陽光発電、風力発電ともに世界TOP5に入る市場規模になっています。成長するアジアは、欧米中、そして日本にとって非常に重要なビジネス市場になっていくのです。

江田 健二 RAUL代表取締役

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富山県出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュア入社。エネルギー/化学産業本部に所属。2005年にRAUL設立。エネルギー情報センター理事。

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