「脱炭素世界一」を目指す中国の超したたかな戦略 表の顔と裏の顔を使い分ける中国の思惑

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もちろん、ここにも思惑があります。中国は、国内のエネルギー需要に応えるために、石炭や石油の海外利権を獲得するよりも国内で再生可能エネルギー事業を育てるほうが得策と判断したのです。中国は、両面戦略をとっています。

最大の温室効果ガス排出国が、世界で最も脱炭素に投資している矛盾を、どう解消していくのか、世界が注目しています。

EV化は中国の独り勝ちを招いてしまう?

太陽光発電や風力発電にとどまらず、中国は、EVにも積極的です。既存の自動車産業がなかったことが、EVを推進する強みになっています。中国政府は、法律や補助金などのインセンティブを活用してEVを後押ししています。

2020年のEV販売台数TOP20社中7社が中国メーカーと聞くと、少し驚く読者の方もいるのではないでしょうか。もちろん、まだ生産台数は数十万台規模ですが、中国の自動車メーカーは、50万円以下で購入できるEVの生産も始めています。

中国の新車販売台数は2500万台です。日本の約5倍、世界の中でも圧倒的に大きな市場です。中国は、大きな国内市場をテコにして、世界的な自動車メーカーを育てようとしているのです。

すでに、EV用バッテリーでは、中国のCATLが世界一のシェアをとっています。2年ほど前に私はCATLの関係者のプレゼンテーションを聞きましたが、同社が新しい街を毎年つくっていくような規模で、工場を新設しているという話には驚きました。

EVは、バッテリーの原材料コストが、コスト全体に占める割合が高い製品です。なぜならバッテリーには、リチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルが使われているからです。今後EVの需要がさらに伸びた場合、原材料コストの大幅な上昇が懸念されています。

そうなってしまうと、日本や欧米の自動車メーカーはEVをいくら製造、販売しても、材料コスト高の理由から、なかなか利益が出せない状況に陥ります。そしてこのレアメタルについても中国が権益確保を進めているため、中国への依存度が高まると懸念されています。そのため、世界の自動車メーカーは、中国のバッテリーメーカーに依存することに危機感を感じ始めています。

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