「セレンディピティ」の芽を潰す残念な上司の悪弊 「本当のことを言うと危険」な環境こそ危険だ

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こうした姿勢によって「コミットメントのエスカレーション(意見を変えられず、すでに失敗が明らかなプロジェクトに追加投資をしてしまう傾向)」のワナに陥らずに済んだ。プロジェクトの失敗は早めに認め、損失を最小限に抑え、そこから学ぶことも可能になった。

弱さをさらけ出せるのは勇気がある証拠

では心理的安全性はどうすれば高められるのか。エドモンドソンが推奨するのは「環境を整える」「発言を促す」「建設的に対応する」という3段階のステップだ。

ここでは、「環境を整える」について軽く紹介しよう。

環境を整えるとは、メンバーの間で期待事項や意義を共有することを意味する。重要なのは、組織の成功には1人ひとりの意見が重要であると全員に理解させ、発言する際のハードルを下げることだ。

状況は複雑であること、問題の解決が重要であること、解決策は誰にもわからないこと、そして全員の貢献が欠かせないことを伝える必要がある。

病院の経営者なら、医療現場では間違いが起こりやすいことを知っている。責任者が間違えることもあるので、誰もが問題を指摘できるかが生死を分けることもある。

リーダーズ・オン・パーパスでは『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の「今年のCEO」に選ばれた数十人を対象に調査を実施した。

共感、好奇心、他者の話に耳を傾ける姿勢が「弱さ」の表れであるならば、彼らの多くは「軟弱」とみなされるだろう。

しかしブレネー・ブラウンの研究が示すとおり、自らの弱さをさらけ出せるのは勇気がある証拠なのだ。

クリスチャン・ブッシュ サンドボックス・ネットワーク共同創設者

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Christian Busch

ニューヨーク大学(NYU)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、パーパス・ドリブン・リーダーシップ、イノベーション、アントレプレナーシップを教える。LSEでイノベーション・アンド・コクリエーション・ラボの共同ディレクターとコースリーダーを務めたのち、NYUではセンター・フォー・グローバル・アフェアーズ(CGA)のグローバル・エコノミー・プログラムのディレクターを務める。LSEにて博士号(Ph.D.)取得。20カ国以上で活動する若手イノベーターのコミュニティであるサンドボックス・ネットワーク、強い影響力を持つリーダーの集まりであるリーダーズ・オン・パーパスの共同創設者。

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