日本酒に惚れ「酒蔵作った」フランス人男性の半生 最初は「冗談のような」アイデアだったという
コロナ禍による飲食店の営業禁止で2020年は生産を諦めるところまで追い込まれながらも、創業6年目に入った昇涙酒造は、現在原酒で年1万リットル程度の生産を行うとともに、すべて純米酒の4銘柄(「暁」「風」「浪」「雷」)に加え、あんず酒やにごり酒を展開している。
かつてブッフ氏が修業した吉祥寺の居酒屋「にほん酒や」の高谷謙一氏は、現在提供する2017年の「一心」を「これを1年目に作ったのは奇跡」とまで評価する。「コクがありつつ、食事を引き立てるので、料理は選ばない」という特徴を持ち、まさに「世界のどこでも日本酒が作れるということを証明した1本」であるという。ちなみに2019年より日本での販売も行っており、高島屋のECサイトなどで購入することができる。
無農薬の米で日本酒を作る計画も
フランスで日本酒を作るという目標を達成したブッフ氏――。その目はすでにその先を見据えている。実は創業にあたり最初の5年間は日本人の杜氏(とうじ)を招いて生産していたが、今年からは梅津酒造の助言を仰ぎつついよいよブッフ氏自ら生産を取り仕切る。
またヨーロッパに精米機がないという事情から、今までは日本から精米済みの米を輸入していた。だが、環境意識の高まりが著しいフランスにおいて、有機のお酒を求める顧客の需要に対応するため、地元フランスかイタリアの無農薬の米で日本酒を作る計画が進行中である。
「未来は確実に地産地消かつ有機にある。残念ながら日本ではまだ有機の米農家が少ない」とブッフ氏は語る。精米機については、すでに4~5カ所あるヨーロッパの酒蔵で共同購入することを考えているという。文字どおりゼロからのスタートだった昇涙酒造だが、さまざまな障壁にもかかわらずたった6年でここまでの成長を見せた。今後の展開も見逃せないだろう。
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