日本酒に惚れ「酒蔵作った」フランス人男性の半生 最初は「冗談のような」アイデアだったという

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日本酒は現地でも少しずつ注目を集めている(写真:Les Larmes du Levant)

ただ最近は、フランスにおける日本文化理解の深まりやブッフ氏をはじめとする生産者や輸入業者の努力、さらにサロン・デュ・サケといった日本酒関連の大規模イベントのおかげで、日本酒への理解および注目度はかなり上がってきているようだ。

その証拠に、ブッフ氏の顧客でミシュランの星付きのレストランは40にも上り、その中にはヤニック・アレノ氏やアラン・パサール氏といった3つ星料理人も含まれる。彼らはフランスで日本料理店を営んでいるわけではなく、フランス料理のシェフである。

なぜ今、日本酒は注目されているのか?

ではなぜ、現地のシェフやソムリエに日本酒は注目されているのか。その答えは、逆説的にもフランスがワインの国であることにあるようだ。

ブッフ氏によれば、「酒石酸やタンニンなど、ワインに含まれる成分のせいで、卵やアスパラ、スパイスの効いた料理など、ワインが合わない食べ物というのは実は結構たくさんある」。だが、アミノ酸由来の旨味成分をもち、ワインとほぼ同じ度数でありながら「より幅広い食べ物と合わせることのできる日本酒」は、「ワインの死角をカバーし、お酒と食べ物のより幅広い組み合わせを可能にしてくれる飲み物」として評価されているのだという。

創業後5年間は日本人の杜氏を招いて生産していたが、今年からはブッフ氏自ら生産を取り仕切る(写真:Les Larmes du Levant)

ブッフ氏も、食中酒として食事の邪魔をしないため、どちらかというと香りが華やかな酒というよりも、日本酒の伝統を忠実に踏まえつつ、「旨味のしっかりとした、穀物の味がするもの」を醸すよう心がけているという。

このようなこだわりがあるからこそ、ブッフ氏は最近増えている海外の消費者を意識した白ワインのような味わいの日本酒に疑問の目を向ける。「海外のシェフや食通が日本酒を評価するのは、日本酒が日本酒だからであって、白ワインに似ているからではない」と言う。

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