世界で戦う、鉄道王国ニッポンの弱点 海外への“売り込み”体制は万全か?
欧州大陸と地続きでないため実車を展示できない日本勢は、シミュレーターに趣向を凝らす。JR東日本のブースに展示された東北新幹線E5系の運転シミュレーターは、鉄道好きで知られるミュージシャンの向谷実氏が開発した。鉄道ファンならではのこだわりで、スクリーンに投影されるのはコンピュータグラフィックス(CG)ではなく本物の映像だ。ハイビジョンで撮影した運転風景は迫力満点。「某国の鉄道総裁が“試乗”してびっくりしていました」と、向谷氏は興奮気味に語る。
中国の鉄道車両製造大手、中国南車集団も日本同様、実車を持ち込む代わりにシミュレーターにこだわった。こちらはシミュレーターの巨大さで勝負する。
会場内は鉄道メーカーや鉄道事業者で大賑わい。あちこちでイスラム教の民族衣装をまとった人たちの姿が見える。彼らは中東やアフリカの政府や自治体の役人たち。こうした地域では人口急増中の都市が多く、鉄道による交通網の改善を狙っているのだ。
車両メーカーや部品メーカーだけでなく、鉄道関連のさまざまな会社が出展しているのもイノトランスの特徴である。たとえば案内掲示板のメーカーや駅待合室のいすメーカー。さらには列車の車内販売を請け負う会社もある。
製品をブースに展示しない欧州メーカー
会場内を歩いて回って、気づいたことがある。
アルストム、独シーメンス、加ボンバルディアの「ビッグスリー」をはじめとした欧州メーカーのブースには、製品の展示がほとんどないのだ。技術を説明するパネル等の展示も少ない。
にもかかわらず、ブース内は多くの人がグラス片手に談笑している。おそらくメーカーの営業マンと顧客が基本情報を交換しあって、後日商談に入るのだろう。屋外に本物の車両があるため、成り行き次第でそちらに移動するということもあるに違いない。
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