維新と立憲「ヒトラー発言」で不毛な泥仕合の末路 野党間対立で漁夫の利を得るのは岸田政権
そもそも大阪維新の会(当時)を立ち上げて以来、橋下氏がヒトラーに例えられたことは少なくない。また、橋下氏自身がヒトラーの名前を使って批判を展開したこともある。
2012年に当時の民主党政権を率いた野田佳彦首相が消費税を5%から10%に段階的に引き上げる法案を国会提出した際、橋下氏は記者団に対し「マニフェストにまったく書いていないものを出してくるのは完全な白紙委任。ヒトラーの全権委任以上だ」と厳しく批判している。
こうした過去を踏まえた立憲やメディアなどが「橋下氏はダブルスタンダード」と非難すると、橋下氏はすぐさまツイッターで「僕は消費税増税法案を批判したわけで、民主党の法人格全体をヒトラーに重ね合わせて侮辱したわけではない」と反論した。
まさに、売り言葉に買い言葉で、両党の場外乱闘はエスカレートするばかり。ただ、その背景には参院選をにらんでの両党の厳しい闘いがあることは間違いない。昨秋の衆院選でも、維新が立憲の票を奪い取った結果、立憲が敗北したとされるからだ。
自民党の本音は「高みの見物」
最新の各種世論調査では、政党支持率で維新が立憲を大きく上回っており、どちらも引くに引けない状況だ。
ただ参院選で、公明、共産両党も含め、自民以外の各党がどんぐりの背比べ状態で競り合う展開となると、「ドント方式で獲得議席が決まる比例代表では、相対的に自民が有利となり、しかも、1人区で野党が候補一本化で対立すれば、こちらも自民を利する」(選挙アナリスト)のは明らかだ。
だからこそ、自民は「政治家をヒトラーに、政治団体をナチスに例えるのは、最大の侮辱」(世耕弘成参院幹事長)などと、立憲を攻撃する維新を擁護するふりもするが、本音は「高みの見物」(自民幹部)だ。
これまでの衆院予算委を舞台とする通常国会の与野党論戦は、野党がそれぞれの立場で岸田首相のコロナ対策や新しい資本主義を攻撃するが、暖簾に腕押しで、まったく盛り上がっていない。すでに3回も設定された集中審議でも波乱がなければ、来年度予算案の早期衆院通過は確実だ。
国民がおびえるオミクロン株の感染爆発も、現状では「近い将来のピークアウト」(官邸筋)が見込まれている。それだけに、政権と厳しく対峙するはずの野党同士が仲間割れすれば「与党参院選勝利のための“最大の援軍”になる可能性は大きい」(選挙アナリスト)。
岸田首相は1月31日と2月2日の2回の衆院予算委集中審議は無難に乗り切った。ただ、オミクロン株の全国的感染爆発はなお続き、東京、大阪、愛知の3大都市圏からの緊急事態宣言発出要請も日増しに現実味を帯びる。
それでも、岸田首相が自信と余裕の表情をみせるのは、「このまま安全運転を続ければ、野党の共倒れで参院選も有利になる」(周辺)のが理由とされる。ただ、与野党双方に「コロナ対策より選挙優先」への反省と自覚がなければ、国民の政治不信がさらに拡大し、参院選後の岸田首相の政権運営が厳しくなる可能性は少なくない。
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