中古車買取業者が語る「国産旧車価格」高騰の真相 バブル景気のように弾ける可能性もあると分析

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ハコスカという相性で今も愛され続ける初代スカイラインのGT-R(写真:日産自動車)

とくに1969年発売のスカイライン初代モデル(通称ハコスカ)や、1972年発売の4代目(通称ケンメリ)をベースとしたGT-R仕様は、従来から価格は高めだったが、「近年は業者間の取引相場で3000万~4000万円になる」という高騰ぶりだ。

ケンメリという愛称で親しまれた4代目スカイライン。GT-Rとしては2代目となる(写真:日産自動車)

理由は、稀少性の高さだ。例えば、同社が過去に買取した車両の中には、「10年以上車庫に眠っていて、故障して不動車だったケンメリのGT-Rに400万円以上の値がついた」事例もあったそうだ。菊地氏によれば、「とくに、ケンメリGT-Rは稀少性が高く、400万円を超える買取価格に修理費用が加わったとしても再流通が可能」だという。

国産スポーツカー価格高騰の理由

こうした古い国産スポーツカーの中古車価格が高騰している理由について、菊地氏は以下のような理由を挙げる。

『1.アメリカの25年ルール』『2.スポーツカーの生産自体が減ってきている』『3.RX-7の高騰はロータリーエンジン搭載車が現行モデルにないため』『4.(ハコスカ、ケンメリなど)もともと高かった旧車の希少性がさらに増している』『5.コロナ禍で趣味にお金を使う人が増えた』『6.ガソリン車に今後乗れなくなると思っている人が増え、今憧れの旧車を手に入れておこうと考える人が多い』

アメリカの25年ルールで高騰したR32型のスカイラインGT-R(写真:日産自動車)

これらについて菊地氏は、具体的に次のように説明する。まず、1のアメリカ25年ルールを簡単に説明すると、いわゆるクラシックカー登録制度のことだ。アメリカは、基本的に右ハンドル車の輸入を認めておらず、日本車やイギリス車などは国内で登録できない。だが、製造から25年を経過した車両は、右ハンドル車もクラシックカーとして認められ、現地の安全基準や排ガス規制なども対象外となるため、輸入が可能となる特例ルールがある(厳密には州によって異なる)。菊地氏は、この制度により、「近年アメリカの愛好家向けに、日本の名車と呼ばれる旧車も海外流出することが多くなった」ことが、稀少性や価格を高める要因のひとつになっているという。

2について菊地氏は、「各自動車メーカーの現行ラインナップに設定される、スポーツカーの割合が減っていること」も要因だという。最近は、スポーツカーに限らずMT(マニュアルトランスミッション)車が減っているが、かつてのスポーツカーはMT車がほとんど。アクセル、ブレーキ、クラッチの3ペダルに、マニュアルシフトを操ってクルマを自在に操る感覚を楽しみたい愛好家が、旧車のスポーツカーを選ぶ傾向にあるという。

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