マーケティングがもはや「運ゲー」ではない理由 データサイエンスが「消費者分析」を一変させた

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

かつてのマスマーケティングの時代は、消費者のデータが取れなかったため、より多くの人に、情報を届け、購入してもらうことを重視した時代でした。結果として、より多くの人の満足度を高めることが戦略上のポイントでした。CS(Customer Satisfaction)の時代です。

『データサイエンティスト入門』(日本経済新聞出版)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

2000年頃になると、CRM(Customer Relationship Management)の時代がやってきます。IT技術の進展により、個々の消費者のデータがとれるようになりました。POSデータなどから、顧客属性(性別、年代)などの情報や、購買履歴の情報がとれるようになりました。それらの情報をもとに、50代・男性であればこのような商品が好きなはずだとか、牛乳を買った人はパンを買う可能性が高いなどの傾向が把握できるようになりました。企業は、消費者に対して、興味がありそうな情報(興味をもつ確率が高い情報)を提供することが戦略上のポイントでした。

近年は、マーケティング戦略ではCX(Customer Experience)戦略が注目をあびています。CRMの時代と比べて、さらに深い消費者のデータが取得できるようになったことをうけて、消費者とのコミュニケーションのあり方を設計していこうという考え方です。

具体的には、CRMの時代では、消費者の購買履歴しかわからなかったものが、その背景までわかるようになりました。例えば、Webサイトの閲覧履歴などのデータも取得できるようになったため、その人の志向を分析できるのです。同じカテゴリーの商品を買う際にも、高級ブランド志向なのか、価格重視なのかなどを推測できます。顧客の感情も考慮して、顧客接点をマネジメントすることがCX戦略のポイントです。

もはや「運ゲー」ではない

CRMの時は、消費者に対して、確率論的に最適化された情報を提供することがポイントでした。CXの時代では、さらに、顧客の特徴を分析し、顧客をプロファイリングしながら、好みの情報を提供することがポイントです。言い換えると、プロファイリングするために必要なデータを取得できるようになったことがCX戦略ブームを起こしたといえます。

取得できるデータの質・量が変化するたびに、マーケティング戦略のトレンドは変化してきました。今ではデータサイエンスがマーケティング戦略を牽引しているのです。

塩崎 潤一 野村総合研究所 未来創発センター生活DX・データ研究室長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Junichi Shiozaki

1967年生まれ。筑波大学社会工学類卒業。1990年、野村総合研究所入社。専門分野はマーケティング戦略、数理解析・数理モデル、生活者の価値観など。同社にてデータサイエンスを活用した新規事業の立ち上げに責任者として関与。主な著書に『変わりゆく日本人』、『第三の消費スタイル』など。2019年より(社)データサイエンティスト協会の理事も兼ねる。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

この著者の記事一覧はこちら
広瀬 安彦 野村総合研究所 エキスパート研究員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

1972年、三重県四日市市生まれ。慶応義塾大学文学部卒、青山学院大学社会情報学研究科にて博士前期課程、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院にて博士後期課程を修了。大手印刷会社を経て2001年に野村総合研究所に入社。専門はインターネットによる広報戦略、データサイエンティストの育成、M-GTA(Modified GroundedTheory Approach)を用いた質的研究。明星大学経営学部非常勤講師、日本生産性本部 経営アカデミー講師。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事