苦境の津軽線「ガニ線カード」が生んだ"化学反応" 地元大学の学生発案、JRと自治体も動き出した

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そもそも津軽線は、三厩駅から竜飛岬や青函トンネル記念館に向かうバスが出ていることもあり、観光利用も多い。世界文化遺産登録を契機に全国から観光客を呼び込める可能性もある。その意味で新幹線と津軽線の連携は重要だ。

津軽線の終点、三厩駅。竜飛岬や青函トンネル記念館に向かうバスが発着する=2018年(記者撮影)

津軽線の津軽二股駅は新幹線の奥津軽いまべつ駅のほぼ真下にあり、両駅の乗り換えは容易だが、両者のダイヤが接続しているとは言いがたい。せっかくの新幹線も在来線とつながらないと宝の持ち腐れだ。とはいえ、今年3月のダイヤ改正では、JR東日本が津軽線の一部列車の運行時刻を見直すことで、新幹線との接続が改善する。

JR東日本盛岡支社の担当者は、「会社の違いを超えて地域を盛り上げることに意義がある」としており、今後、新幹線と津軽線の連携が進むことが期待される。そのためには地域の後押しも欠かせない。

プロジェクトの「費用対効果」は?

今回のガニ線カードの取り組みの費用対効果はどのようなものだろうか。櫛引教授によれば、青森大学のメンバーたちは学内の学生活動支援制度を活用して10万円の予算を確保。ここから印刷代や、津軽線・新幹線の旅費を支払った。このほかに間接的な費用として役場職員やJR社員が取材先との調整や取材先への送迎といった業務を行っているが、広告代理店を使ったPR施策と比べれば破格の安さだ。

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効果はまだわからないが、このプロジェクトを継続することによって津軽線活性化に取り組む人が今以上に増えれば大成功といえるだろう。

ガニ線カードの第2弾は12月26日に配布を終えた。トークイベントの終盤、参加者たちは「次のカードはどんなふうに作ろうか」という話題で盛り上がっていた。もちろん、彼らがカードそのものではなく、カード作りを通じて生まれる化学反応を楽しみにしていることは言うまでもない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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