苦境の津軽線「ガニ線カード」が生んだ"化学反応" 地元大学の学生発案、JRと自治体も動き出した

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司会を務めた青森大学の櫛引素夫教授によれば、ガニ線カードの構想の発端は2020年春に遡る。津軽線を担当するJR東日本盛岡支社は津軽線沿線自治体の外ヶ浜町、今別町と利用促進・沿線振興を模索していた。そこに青森大学櫛引研究室(社会学部)が加わり、人口減少や高齢化が進む中でも持続可能な地域作りを目指す「JR津軽線プロジェクト」が立ち上げられた。

2021年12月17日に奥津軽いまべつ駅で開いた「ガニ線カード」について語るトークイベント(記者撮影)

「津軽線をどうにか活性化できないかとJR東日本から話を持ちかけられていたほぼ同じ時期に、私のゼミの学生たちから津軽線を盛り上げたいという提案があった。こんなふうに思いを同じくする人たちがいたことに驚いた」と櫛引教授が振り返る。

津軽線プロジェクトでは2020年の夏から秋にかけて学生たちが津軽線に乗って沿線を訪れ、その模様や沿線の魅力を動画にまとめて公開した。さらに取り組みの一環としてガニ線カード第1弾を8枚1セットで250部作り、2021年3月6日から青森駅を訪れた利用者に学生たちが手渡しした。好評で1週間ほどで在庫がなくなってしまった。まずは大成功といってよい。

カード作りで「化学反応」を

では、カードの制作、配布の経験をどのように津軽線の活性化につなげるか。櫛引研究室のメンバーである青森大学社会学部3年の相坂匠飛さん、小山内貴之さん、森川楓希さんは考えあぐねていた。「地域活性化のためには、地域の人たちと交流して地域の人の思いを知る必要がある、だがどうやって地域の人たちと交流すればよいのか」。櫛引教授がヒントを出した。「もう1回、ガニ線カードを制作してみてはどうだろう」。

ガニ線カードの第1弾は、カード作りそのものが目的だったが、第2弾はカード作りを通じて地元の人と出会って、話をすることが目的。カード作りが触媒となって何らかの“化学反応”が生まれればよいと櫛引教授は考えた。

地域の中に飛び込んで、話を聞いてみると自分の先入観とは違っていたことに学生たちは気づいた。相坂さんはこう話す。「過疎化が進んでいるので、街全体が“あきらめムード”なのかと思っていたが、話してみたらみんな明るい。『地域を盛り上げたい』と奮闘している人もいた。この地域は終わっていない」。

学生たちにとってはカードの制作を通じて、地元と交流して新たな気づきを得るという当初の目標が達成されたわけだが、実はそれ以上の副次的効果をもたらしていた。

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