苦境の津軽線「ガニ線カード」が生んだ"化学反応" 地元大学の学生発案、JRと自治体も動き出した

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第1弾に引き続き、第2弾でも外ヶ浜町や今別町の役場職員たちが取材先選定の手伝いをしたほか取材にも同行したが、役場の職員にとっても、現地を訪れて地元の人たちに実際に話を聞くことで新たな気づきが得られたのだ。

外ヶ浜町役場職員の青松啓隆氏は、「自分が知らない津軽線の魅力をあらためて知ることができた」、今別町役場職員の成田秀和氏は、「取材に同行することで、普段なかなか聞けない住民の方の声を聞くことができ有益だった」とそれぞれ振り返る。「こんな人がいたのか。津軽線も捨てたもんじゃない」。地域のキーパーソンたちがこのように認識したことはプロジェクトの最大の成果だったといえる。

地域活性化の必要性を感じてはいるものの、具体的に何をすべきかで全国の過疎地域が悩んでいる。しかし、そこに住んでいる人たちはそれぞれの立場ですでに活性化のための活動を始めているのだ。「こうした動きを背後から後押しするだけでも支援になる」と櫛引教授は話す。

第2弾の「ガニ線カード」(記者撮影)

学生たちの取材を基に、カードのデザインを担当したのはJR東日本青森駅の佐藤慎営業助役だ。「前回と同じデザインではつまらない。何か工夫をしようと考えていたら、海の色は単なる青ではなくいろいろな“青”が混じり合って海の青になっていることに気づいた」。こうして生まれたのが4色の青を使った今回のデザインだ。「地域のみなさんと連携して今後も新しい取り組みをしていきたい」と、佐藤助役は声に力を込める。

北海道新幹線が果たす役割

津軽線活性化のためには北海道新幹線が果たす役割も欠かせない。トークイベントの会場となった奥津軽いまべつ駅は、青森県内にあるもののJR北海道の管轄である。同駅でもカードの配布が行われ、JR北海道は会場も提供した。その意味でJR北海道は津軽線活性化プロジェクトのメンバーではないものの、実質的には参加しているといってよい。

同社が北海道新幹線開業初年度に公表した数字によれば、奥津軽いまべつ駅の1日乗車人員は全国の新幹線駅で最も少ないわずか60人。櫛引教授によれば、利用者の中には新幹線の運行に携わる人が少なくないようだ。今のところ観光需要は多くない。

しかし、2021年7月に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことで、遺跡群に含まれる外ヶ浜町内の大平山元遺跡も脚光を浴びることになった。その大平山元遺跡は津軽線大平駅から歩いて数分の場所にある。

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