簡単なコツで急改善「一瞬で伝わるグラフ」作る技 棒グラフと円グラフを正しく使い分けられる?

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ここまではどちらかというと改善点を指摘してきた。ここからは、やってはいけない「グラフの御法度」を紹介していく。非常に残念ではあるが、世の中には不都合なデータを隠すために、人の視覚効果を逆手にとって、意図的に誤ったグラフを作成してだまそうとする人もいる。ここで挙げるようなグラフを見かけた場合は、ぜひ注意してほしい。

グラフを立体化した3Dグラフは、それだけでインパクトがあり、使いたくなってしまうかもしれない。しかし、必ず誤解が生じるグラフになるので、絶対に作成しないでほしい。3Dグラフを提示しただけで、「この人は自分をだまそうとしているのではないのだろうか?」と思われ、信頼をなくすこともある。

では、なぜ3Dグラフがダメなのか。下の3D円グラフを見てほしい。

(画像:筆者作成)

「満足」と「どちらとも言えない」の表面積に注目すると、「どちらともいえない」のほうが広い。しかし、データは「満足」のほうが「どちらともいえない」より10%多い。データでは「満足」が高いのに、表面積は「どちらともいえない」のほうが広くなっている。

3Dグラフは、データと表面積の関係が崩れるため、正確にデータを表すグラフにはならない。グラフを悪用する人は、自分たちが主張したいものを手前に持ってくることにより、視覚効果を逆手に取って、大きな値ならばさらに大きく、小さな値ならばあまり小さくない印象を抱かせようとしてくる。

縦軸の起点がゼロではないグラフに注意

もう1つ注意してほしいのは「縦軸の起点がゼロでないグラフ」である。縦軸がゼロから始まっていないグラフは、データの差を過大に表現する。

下のグラフを見てほしい。これは前出のプロテイン粉末の販売金額のグラフの縦軸の起点を80からにしたものである。縦軸の目盛りを80から開始しているため、販売金額の差が視覚上は大きくなっている。

もう少し具体的に説明すると、データでは2020年は2018年の約1.37倍である。しかし、起点80の棒グラフの高さだけを比べてみると3倍以上となる。このような視覚効果により差を大きく見せようとしている。

●起点「80」のグラフ

(画像:筆者作成)

●起点「0」のグラフ

(画像:筆者作成)

今回は、データを伝えるためのグラフの作法(ルール)をいくつか紹介させてもらった。グラフは視覚情報を活用することで、データを理解してもらうために非常に役立つが、同時に人をだますことも可能である。

ほかにも細かい作法はあるが、今回は紹介した作法と、データを正確に伝えているか、自分がデータの何を読み取ってほしいのか、を意識していれば大丈夫である。

もし不安ならば、今の時代はインターネットにさまざまなデータのグラフが掲載されているので、そういったものを参照するのもおすすめである。

増田 純也 インテージ 先端技術部、滋賀大学データサイエンス学部インダストリーアドバイザー

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ますだ じゅんや / Junya Masuda

大学院修了後、主にマーケティング領域のデータ分析業務をフリーランスとして開始。その後、電通マーケティングインサイト(現電通マクロミルインサイト)を経て、2014年に株式会社インテージ入社。アンケートデータやPOSデータの分析業務を経て、現在は、社内外のデータサイエンス人材の育成に従事。

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