首都圏貫く湘南新宿ライン「開業20年」進化の歩み 東海道線や高崎線を新宿で結ぶ大プロジェクト

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車両は直通に115系・211系・E231系、新宿折り返し列車に215系・E217系。国鉄型にJR最新型、ダブルデッカーと、バラエティ豊かと言えば聞こえはよいが、まさしく寄せ集められた。215系とE217系以外の、直通を担うメインの車両は北側の所属で、それらは当時、グリーン車を連結していなかった。

この百花繚乱ぶりには各種エピソードがある。215系は、これ以前、東海道線の快速「アクティー」に使われていたが2階建て車両で2ドア車のため乗降に手間取り、しばしば遅れを出していたことに加え、その2階建ての人気から特急「踊り子」の乗客を食ってしまう傾向があった。そこで転用となった。215系は編成数が少ないので、補うために運転系統上で適した基地からE217系を引っ張り出した。

また、115系とE231系は小山電車区(当時)の所属、211系は新前橋電車区(同)。当時、車両基地ごとに所属車種を統一して効率化を図る観点から、そのように分けられていた。115系の起用はE231系への置き換え過程での産物だったが、その湘南色の電車が横須賀線に入るのだから、鉄道ファンには注目された。一方、211系も含めて編成中にグリーン車がない点は東海道・横須賀線各駅では異分子であり、各駅ではその旨の案内を繰り返していた。

「とにかく走らせる」でまずスタート

ところで、現在まで脈々と続く直通の運転系統は、じつはこの車種の関係で決まった。新前橋は211系だから、同じく211系が集中配置されている田町電車区(まさしく現在再開発中の品川の基地)が受け持つ東海道線と相性がよい。一方、宇都宮線系統のE231系は、すでにE217系で4ドア化され、車両技術面でも新世代同士となるため横須賀線と相性が合う。いざというの時の対応が容易なわけである。

横須賀線の新顔E235系とすれ違う湘南新宿ラインの E231系。横須賀線を走る湘南色の電車に違和感を覚える人はもはや少ない(横浜駅東方)(写真:久保田 敦)

“しっちゃかめっちゃか”といった言葉が浮かぶのは新宿駅の光景も同じだった。現在、N′EXや朝晩の通勤特急、東武線直通特急が使用している5・6番線はもともと甲州街道陸橋架け替えに合わせた構内配線改良の際の仮ホームとして設けられたもので、湘南新宿ライン開業時は存在していない。だから、N′EXや通勤特急前身のライナーは埼京線や湘南新宿ラインと同居しており、しかも駅改良工事は始まっていたから、雑然とした上にあちらこちらへ折り返す列車で、混沌の極みだった。とにかく走らせる。走らせて需要が伸びれば車両にも設備にも投資できる。そうすれば整理された形になってゆくーー。そんなスタートだった。

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