台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う

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車両の保守作業については、同じ日立製の英国向け車両であるクラス800シリーズの場合、日頃の運用に必要な保守点検作業も同社が長期スパンで受注し、車両の細かい点検補修ができる体制が整っている。一方、台湾の場合は部品の純国産化を目指す政府の方針もあり、保守作業は基本的に台鉄のスタッフが担うことになるという。

加えて、台湾ならではの「外交事情」が複雑に絡む一面もある。入札書類では中国本土メーカーの参加を明確に禁止しており、契約書でも主要機器については中国が加盟していない、「政府調達に関する協定(GPA)」加盟国しか供給できないように定めている。「中国製部品を使ってほしくない」と訴える台鉄側の意向もあったといわれ、設計・生産での調整には苦労の跡が忍ばれる。

「台鉄改革」の一歩に

台鉄のスピードアップや前述の道路改良など改善が進む東部各都市への交通網だが、長期的視点ではこれだけにとどまらない。日本の国土交通大臣に当たる交通部部長の王國材氏は先ごろ、台湾全土に高速鉄道網を拡げる「高鐵環島計画」を発表し、実際に宜蘭地区への高速鉄道延伸に向けたルートの選定が進んでいる。日本の新幹線と異なり、台湾の高速鉄道は在来線を運行する台鉄とは別会社の運営で、対立関係にある。高速鉄道が完成すれば厳しい競争になることは間違いない。

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台鉄の計画からは、今からそれに対抗しようとする様子が垣間見られる。発表によると、EMU3000は今後、東部幹線のみならず西部幹線に直通するルートにも投入する予定という。これによって運用が減るTEMU2000を比較的需要の少ない南回り線を経由するルートにも転用し、速達性の劣る気動車や客車列車を置き換える目論見があるようだ。また、EMU3000の契約には観光列車として使われる特別仕様車4編成の製造も含まれており、ツアー客に特化したサービスを提供する予定だ。

台鉄は目下、輸送力の確保に加え、高品質のサービスと多様なルートの提供でイメージの一新を目指している。台湾の鉄道文化研究の第一人者である台湾師範大学の洪致文教授はEMU3000導入について、「当局の徹底した乗客目線の姿勢に、利用客の反応はおおむね好評だ。これをきっかけに、今後さまざまな面で台湾鉄道が変わっていくことが期待できる」と評価する。

EMU3000は「台鉄改革」の一手として、重大事故の連続で失った信頼を取り戻す救済者となるだろうか。

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小井関 遼太郎 東アジアライター

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こいぜき りょうたろう / Ryotaro Koizeki

台湾北部在住。観光や都市政策を中心に研究を進めている他、台湾のガイド資格などを保有しており現地事情に精通。台湾から見た東アジア情勢を中心に発信している。
E-mail : ryo120106@gmail.com
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