台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う

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EMU3000は第1陣の納入分として3編成・36両が台湾に到着しており、まずは東部幹線の特急列車3往復に投入された。当面は同線方面を走ることになる。

時刻表を見ると、今回12月29日のダイヤ改正でEMU3000へ車両を置き換えた列車は、従来と比べて所要時間が10分ほど延びている(樹林―台東間の場合)。所要時間が延びてでも新型車両に置き換えなければならない「切羽詰まった事情」とはどのようなものだろうか。

振り子式車両は輸送力不足

台湾は全体的に山がちで、西部と東部の海岸沿いに人口が密集している。とくに東部海岸エリアは険しい山や峡谷が続く。戦前の日本統治時代から建設が始まった鉄道は、2005年に東部の主要都市である花蓮までの複線化が実現したものの、線形が悪くスピードが出しにくい悪条件を伴う。

台鉄は、台北―花蓮―台東間の所要時間が高速バスより長く競争力が劣るとみて、振り子式電車の「TEMU1000」(タロコ号)や、車体傾斜式の「TEMU2000」(プユマ号)を相次いで導入し速達性の向上を図ってきた。しかし、これらの列車は8両編成と短く、さらに振り子式車両であることから高速走行時の揺れを考慮して立席をなくし、全席指定制とした。こうした事情もあって、増え続ける旅客需要に対する抜本的な改善策とはならなかった。

今回投入されたEMU3000は12両編成で、従来と比べ座席数が1.4倍となる。これにより、「一票難求」問題は解決が進むことだろう。しかし、振り子式車両ではないことから、カーブでの通過速度が従来のTEMU1000よりも遅いため、スピードダウンを余儀なくされたことになる。

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