特急「ハローキティはるか」激レア運行の一部始終 価格はどう決めた?遅延に苦悩した本番当日
運転台については停車中での実施とはいえ、ツアー中の「生きた車両」で実施するため、安全運行に関わる機器については厳重に管理する必要がある。そこで、列車が日根野支所に入線したのち、重要スイッチ類にはカバーが取り付けられ、また、警笛などはスイッチを切ることで対応した。
そして11月23日のツアー当日、参加者を乗せた列車は一路野洲へ。車内ではJR西日本の在来線特急では姿を消したカートによる車内販売が実施され、山陽新幹線で運行中の「ハローキティ新幹線」グッズや、岡山エリアの観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」グッズ、アイスクリームなどを販売。かつての在来線特急にあったような賑わいも見られ、参加者がワゴンを呼び止める声が続く。
ところが、快走を続けていた271系がなぜか徐々に徐行を始めた。先行列車に遅れが発生しており、ツアー列車にも波及したのだ。
「まずいね、野洲の中、どこまで行けるかな」「手前までにしておこうか」。そんな声がスタッフから漏れ聞こえてきた。所定では野洲派出所の最も奥まで入線し、折り返す予定だったが、ツアー列車は10分少々の遅れで運行中。ツアー列車は臨時列車ゆえに遅れは定期列車に大きな影響を及ぼしかねない。そのため所内には入線するが、手前の電留線で折り返す検討がなされた。しかし、そのためには新たに関係各所との迅速な調整が必要なほか、BRTを見学するというサプライズが1つ達成できなくなる。
「折り返し時間を短縮することでいけますよね」「よし、行こう!奥まで行きます!!」と宮里氏は予定通り奥までの入線を決行。結果として、折り返し時間を若干短縮することで、無事にBRTを車内から見学しつつ、所定のダイヤで日根野支所を目指すことができた。
社員のモチベーション向上にもつながる
今回のツアーは安全面から途中下車はできない。そのため、参加者が車内で退屈しないよう、「おもてなし車掌」による車窓案内や客室内をまめに巡回し旅客サービスを実施した。
加えて、日根野支所内では実際に271系をはじめ、所内で車両整備を担当する社員がツアー列車に乗り込んで、自らの職場を紹介。日根野支所は沿線の幼稚園などの個別見学は時折実施されていたが、今回のような規模のイベント開催は開所以来初となる。
「小さな子どもたちが私たちの現場を見学しているときの表情と、興味深々なまなざしが忘れられない。見学を受け入れるたびに自身の仕事に改めて誇りを持つ」と案内を担当した日根野支所泉谷浩貴氏が話す。宮里氏の思いはここにもあって、「コロナ禍以降、鉄道利用が低迷する中、こうしたファンイベントのようなツアーを行うことで社員のモチベーション向上につながれば」という狙いもあった。
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