線路と道路両用「DMV」、日本が"世界初"ではない 英・米・独・ブラジルなど各国で試行錯誤の歴史

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ただ、線路の専用化が仮に世界初としても、この主張はDMVが抱える課題を端的に表している。車体が軽いDMVは軌道回路(レールに電気を流して列車の位置を検知する保安装置の一種。車体が軽いと電気が通りにくく検知が不安定になる)を使えない。そのため、阿佐東線ではDMV専用の保安装置を整備し、DMVしか走れなくした。

かつての阿佐東線の車両。保安装置をDMV専用にしたため通常の鉄道車両は走れなくなった(筆者撮影)

これでは、ラッシュ時に通常の鉄道車両を使い、それ以外の時間帯はDMVというような併用ができない。DMVの旅客定員は22人(座席18人、立席4人)だから、ラッシュ時でも利用者が少ない路線でないと、導入は困難だ。

阿佐東線は全国のローカル線のなかでもとくに利用者が少なく(2018年度の輸送密度は1日136人)、DMVを導入できたといえる。これは逆にいえば、鉄道を必要とするほどの輸送量がなく、普通のバスを道路に走らせるだけで十分対応できる。そのほうがDMVよりコストを抑えられ、公共交通としての持続性も向上するだろう。

真の「世界初」になるためには

道路がない部分で線路を走るならDMVの必要性も理解できる。しかしいまの時代、並行道路が未整備の鉄道路線は少ない。渋滞回避や災害対策を目的に交通路の二重化を図るにしても、線路をバス専用道に改築すればDMV以外のバスも通行でき、汎用性が高い。

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徳島県次世代交通課は、先行事例が短期間で終わったことも「世界初の本格的な営業運転」の理由として挙げた。しかし、鉄車輪外付式のシストラバスは14年走り、内蔵式のビスバスも2年ほど営業運転した。少なくともいまの時点では世界初とはいえないだろう。

「世界初の本格的な営業運転」という表現には、シストラバスを超える15年以上の長期にわたって営業運転し、地域公共交通の活性化を図るという徳島県や阿佐海岸鉄道の「決意」が含まれていると信じたい。DMVを導入したおかげで利用者が大幅に増えて運びきれなくなり、ビスバスと同クラスの大型DMVを開発……という流れになればよいのだが。

草町 義和 鉄道プレスネット 記者

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くさまち よしかず / Yoshikazu Kusamachi

1969年新潟県南魚沼市生まれ。鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』を運営する鉄道プレスネットワーク所属。鉄道誌『鉄道ファン』『鉄道ジャーナル』などでも記事を執筆。著書に『鉄道計画は変わる。』など。

 

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