線路と道路両用「DMV」、日本が"世界初"ではない 英・米・独・ブラジルなど各国で試行錯誤の歴史
徳島県・高知県の第三セクター、阿佐海岸鉄道の阿佐東線で2021年12月25日、「デュアル・モード・ビークル(DMV)」の営業運転が始まった。
DMVは日本で開発された、道路と鉄道線路の両方を走れるバス。工事や保線など業務用の両用車はさほど珍しくないが、旅客を乗せて営業運転を行う両用バスは非常に珍しい。徳島県や阿佐海岸鉄道などは「世界初の本格的な営業運転」とアピールしている。
ただ、DMVを単純に「世界初」と言うことはできない。海外では古くから道路・線路の両用バスが研究され、営業運転の実例もいくつかある。
最古の営業運転は英国か
営業運転を行った両用バスで最も古いのは、イギリスの「ROAD-RAILER(ロードレイラー)」と思われる。いまから90年以上前の1930年、貨物輸送機器メーカーのカリーア・モーターズが製作した。
車軸の外側にタイヤ、内側にはフランジ(レールから外れないようにするための出っ張り)付きの鉄車輪を装着したもので、「鉄車輪内蔵式」といえるもの。道路から線路に移る際は鉄車輪をレール上に載せ、人力で固定ピンを外してタイヤを引き上げる。
道路~線路の移行(モードチェンジ)にかかった時間は4分ほどとされる。最高速度は道路で時速96km、鉄道では120km。定員は26人(座席のみ)だった。
ロンドン・ミッドランド・スコティッシュ鉄道(LMS)が購入し、1932年4月に営業運転を開始。ブリスワース―ストラトフォード=アポン=エイボン(シェイクスピアの故郷)間の約80kmは線路を走り、ストラトフォードで道路に乗り入れてホテルまで走った。しかし故障が頻発し、数カ月で運転を終了したという。
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