線路と道路両用「DMV」、日本が"世界初"ではない 英・米・独・ブラジルなど各国で試行錯誤の歴史

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ブラジルでは1995年2月、「BISBUS(ビスバス)」という両用バスが営業運転を始めた。サンパウロ州のバスメーカー、テクトランが開発。鉄車輪は「独立内蔵式」で、メルセデス・ベンツの大型バスを改造して油圧式のタイヤ・鉄車輪変換装置を現地で架装した。線路走行時はタイヤを前後とも完全に浮かせ、鉄車輪で走る。

ブラジルで営業運転が行われていた「ビスバス」のイメージ。メルセデス・ベンツの大型バスをベースにした(画像:筆者作成)

定員は73人(座席29人、立席44人)で、営業運転を行った両用バスのなかでは最も多いと思われる。モードチェンジは20秒。最高速度は道路が時速80km、線路は時速50kmだった。

実際に営業運転が行われたのは、パラナ州とサンタカタリーナ州の境界上にある地方都市(ウニアンダビトリア市とポルトウニアン市)だ。運転距離は道路が3.5km、鉄道が2.5kmで、市街地の東西を結んでいた。

川を渡る交通機関に

この都市の東部と西部はイグアス川で隔てられ、東西の市街地を直接結んでいたのは貨物線の鉄道橋だけ。住民は鉄道橋に併設された細い通路を徒歩か自転車で渡っていた。そこでビスバスを導入して鉄道橋付近は線路、それ以外は道路を走り、東西市街地間の移動時間の短縮を図った。道路の未整備区間を直通するための代替策といえるだろう。

現地の動画ニュースサイト『CANAL4 TV』がビスバスの技術者にインタビューし、2021年7月に配信している。それによると、ウニアンダビトリア・ポルトウニアンの両市長ともビスバスには無関心で、修理もままならなかったらしい。テクトランもビスバスを企業PR戦略の一環としか考えていなかった。結局、2年後の1997年頃にビスバスは営業運転を終了したという。技術的な問題があったかどうかは触れていない。

その後、ビスバス導入のきっかけになった鉄道橋は道路橋に転用。2021年には並行して新しい道路橋も開通している。そもそも線路を通る必要がなくなった。

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