線路と道路両用「DMV」、日本が"世界初"ではない 英・米・独・ブラジルなど各国で試行錯誤の歴史

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ちなみに日本の国鉄も1962年、「アンヒビアンバス」という鉄車輪外付式の両用バスを開発した。在来線は2本のレール間隔(軌間)が狭い狭軌で、一般的な大型バスではタイヤがレールをまたいでしまう。そこで台車を装着してタイヤを完全に浮かし、バスのエンジンとブレーキを台車に接続して走った。そのため構造が複雑で台車の着脱に数十分もの時間がかかり、営業運転は実現しなかった。

試験だけで終わったものや現在開発中の両用バスは、アメリカ(1960年代後半)やオーストラリア(1970年前後)、ロシアなど、ほかにも多数ある。営業運転を行った両用バスも、ここに挙げた以外にあるかもしれない。

DMVが「世界初」の理由は?

DMVはJR北海道がローカル線の経営改善策として構想。2004年に試作車が完成した。左右のタイヤ間隔が狭く狭軌に合わせやすいマイクロバスを改造。線路走行時は内蔵した鉄車輪を下ろし、前方のタイヤを浮かして後方のタイヤをレールに載せて走る。モードチェンジは15秒で、営業運転が行われた両用バスでは最短とみられる。

JR北海道が試作したDMV(撮影:今祥雄)

もとはマイクロバスだから通常の鉄道車両より製造コストが安いとされ、重量も軽いため保線コストを抑えられる。線路から離れた公共施設や観光地へは道路を走ることで直通が可能。それによる利便性向上や利用者増加を目指した。

その後、JR北海道は事故や不祥事の続発もあって開発から手を引いたが、DMVに関心を寄せた徳島県が主導して阿佐東線に導入した。営業運転の開始はビスバスより26年遅い。

徳島県の次世代交通課に「世界初の本格的な営業運転」の根拠を聞いたところ、「『世界初ではない』との指摘は各方面から受けている」としつつ、「鉄道区間は保安システムも含めて造り直し、DMV専用にした」「先行事例は短期間で終わっている」とし、「これらの点から世界初の本格的な営業運転という気概を持って取り組んでいる」と話した。

次ページ「世界初」の主張が示すDMVの課題
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