プロの「集中力の極め方」

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プロゴルファー/小林浩美

 先日、アフロヘアのような大きな髪の仏像が新聞に載っていた。五刧思惟阿弥陀如来像とのこと。五刧という長い時間、座禅を組んでいたので髪の毛も相当なボリュームになったらしい。おもしろい髪に惹かれ実物を拝観に行くと、ふくよかな大きな体で鎮座されていた。まるまるとしたお顔の表情がなんともかわいらしい。心穏やかに楽しそうに胸の前で手を合わせていらっしゃった。

座禅と言えば、集中力。ゴルフの試合も一打一打集中してプレーするのが大事である。18ホールプレーするのにだいたい4時間かかるが、その間ずっと気持ちが集中しているわけではない。18ホールの時間の使い方は大きく三つに分かれる。

一つ目はボールからボールの間を歩く時間。このときは気持ちをリラックスさせている時間である。意図的に「昨日の夕食何を食べた?」とか「あの映画おもしろかった」とか無駄話をしてゴルフから気持ちをそらせ、硬くなる気持ちと体を解放しているのである。これは日米ツアーのトッププロが当然のようにやっている。

二つ目はボールに到着してからそれを打つまでの短い時間。ここら辺りから集中モードに入ってくる。「風はどの程度吹いてどの向きか」「ピンの位置に対してどの方向からどの球筋で攻めるのか」「首位との差を考えこのホールは攻めるのか安全策で行くのか」など戦略を練り、どういう球を打つのか決め、それをイメージして素振りをするまでの時間だ。

三つ目はその決めたことを実行する時間、ボールを打つわずかの時間だ。神経を研ぎ澄ませ気持ちを集中させる。ボールの後ろから打ちたい方向を確認し、そこに対してアドレスを正しくとる。アドレス後ワッグルしながら最終確認をする。そしてボールを打つ。この間一切の雑念や邪念の入り込む隙をつくらない。そのためにどうするか。いつも同じ手順で行う自分のルーティンを踏むことだ。野球のイチロー選手がやっているバッターボックスでボールを打つまでのいつも変わらぬあの一連の動作だ。それからは、また「一つ目」から繰り返す。打ったボールはもうどうにもならない、たたいたスコアもどうにもならないので、次はどうするかに気持ちを向ける。試合では毎日毎週この繰り返しをする。集中するときとしないときのメリハリをきっちりつけることで、心や頭がすぐに疲れず、集中力を長持ちさせられるのだ。

臨済宗相国寺派管長の有馬らい底さんが著書の中で興味深いことを記していた。「座禅中に警策で肩をパチリとたたくのは、ゆるんだ神経を一瞬、集中させるためです。集中するのは一瞬でいい。(中略)集中しては緩め、転じていくからこそ、なすべきことができる」(『禅、「持たない」生き方』)そうだ。五刧思惟阿弥陀如来像の何ものにもとらわれない穏やかな顔は、集中力の極みの姿なのかもしれない。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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