もう、20年も経つのかな。6月の全米オープンと7月の全英オープンの解説、その翌週には全英シニアオープンに出場し、昔の仲間と旧交を温める。毎年そんなスケジュールが続いています。今年の全英シニアはスコットランドのカーヌスティでしたが、トム・ワトソンをはじめ、昔戦った相手と再び戦える。ゴルフは楽しい商売です。
レギュラーツアーに出て若手と同じ組で回る、これもいいもんです。この5月のダイヤモンドカップでは石川遼と同じ組になりましたが、俺も若いね。遼が300ヤードも飛ばすものだから、そのボールに1ヤードでも近づこうと思い、クラブを振り回したら、翌日は腰痛で大会を1日で棄権。こんな経験は初めてかもしれません。
最近のボールは、高く上げてややフックをかけると遠くに飛んでランが出る。これはいつもの自分とは逆のボール、逆の動作ですから、こんなことを一日中やったら、腰を痛めるのは当たり前。遼にはベテランの自分をそうさせる、何かがあるんですね。
それが遼の強さかもしれませんが、普通、若手がベテランと一緒に回ると、回るリズムというか、呼吸がわれわれのペースになるんです。けれど、遼は先輩を立てながらも、自分のペースは崩れない。今やろうとしている自分のゴルフに没頭できるタイプのプレーヤーなんですね。これはなかなかできることじゃない。相手がビッグネームだったり難コースだったりすると、それにのまれるのが当たり前なんだけど、それでも自分のゴルフができる、ここに遼の非凡さがあるんです。
ペプルビーチで行われた全米オープン。遼は初日、2日目とトップグループ。決勝ラウンドではうまくいかなかったけれど、多くのことを学んだはずです。
たとえば海側のラフは芝を短く刈ってあるんです。それは、ミスショットのボールが海に転げ落ちるようにしているためです。そして14番のパー5。第3打でピンに寄せるには3畳間ほどの狭いところにサイドピンの球筋を要求している。
アメリカのコースはロブショットのような高い球筋のアプローチを求める場所が多いんですが、7月の全英オープンの敵はいうまでもなく天気、気温です。一日に四季があると言われていますが、キャディーバッグはウインドブレーカーやセーター、夏のシャツやらでパンパン。当然、同じホールでも毎日使うクラブが違います。
全英オープンをテレビでご覧になった方はご記憶にあると思いますが、「転がして寄せる」、このアイデアは遼にはインプットされていなかったんだね。遼は上げて寄せようときつく一発。ここではせっかく乗ったグリーンから転がり落ちることもある。研究熱心な遼のこと。5年後のセントアンドリュースは笑顔でラウンドするだろうね。きっと転がしのアプローチをマスターしてね。
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エージシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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