中国景気はスローダウンしても「メルトダウン」はない

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−−ハンガリーではオルバン政権が欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)からの支援をめぐる話し合いを打ち切りました。

実際にはEUやIMFの支援がなければ財政再建など難しいでしょう。最も低い金利で融資してくれることを考えれば、現実的な対応といえません。ハンガリーの経済は09年に続いて10年もマイナス成長を余儀なくされそうです。同国は「オープン・エコノミー」。GDPに占める輸出比率が高いのです。危機的な状況に陥ったのも、欧州の主要国経済悪化の影響が及んだためです。政府債務の対GDP比率も80%と高く、高金利に苦しめられています。 

−−米国経済などの減速が新興国経済にもたらす影響は。
 
 新興国が主要国への輸出によって成長しているのは事実であり、米国など主要国の経済が本当に「二番底」状態に陥れば、新興国の経済成長にも悪影響が及ぶことは否定できません。ただ、そうしたなかでも、財政面で内需を喚起する手が打てるような中国と、財政面でやや厳しいインドでは当然、“違い”が出てくるでしょう。

−−1990年代後半や2000年代前半のような新興国発の危機が再び起きるシナリオは考えられますか。

その可能性は低いでしょう。過去に比べると各国の経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は改善され、経済運営も順調です。その結果、国への信頼感が高まり、外貨での調達ができるようになりました。一方、国内での調達も可能で、資金繰り不安が解消されました。主要国とは対照的な姿です。

90年代や00年代初頭の経済危機は新興国発で、それが主要国に伝播しました。これに対して、08年の「リーマンショック」は主要国発で、それが新興国にも打撃を与えました。その意味で、過去の危機とは別物といえます。
 
 次に危機が起きるとすればむしろ主要国の周辺国、具体的にはギリシャやポルトガルなどから危機が広がっていく可能性があります。これらの国々は財政再建に向けて緊縮政策を実施していますが、果たしてそれに耐えることができるかがカギを握っています。

−−投資家のリスク許容度は低下傾向にあります。こうした状況下で新興国の資産へ資金が流れるのは難しそうですが…。

リスク許容度低下には大きく、2つの理由があります。1つめは米国経済の二番底リスク。2つめは予想を上回るピッチでの中国景気の減速。もう一つ付け加えるとすれば、前述の欧州周辺国、ギリシャやポルトガルなどの財政危機の問題です。

許容度低下で、投資家はリスク資産を売却し、米国の国債へ資金をシフト。その結果、最弱の通貨であるはずのドルが買われるという矛盾した事態が起きています。それは米国投資家のリパトリエーション(資金の本国還流)に伴うものです。

しかし、本来は各国のファンダメンタルズをチェックし、どこに投資すれば大きなリターンが得られるのかを判断すべきでしょう。年末までに主要国経済の二番底リスクが払拭されれば再び、ファンダメンタルズの良好な新興国におカネが向かうと見ています。

(聞き手:松崎 泰弘=東洋経済オンライン)

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