「FRB利上げでも株価上昇」と読む市場は正しいか 株価に悪い影響がある金利上昇は起こらない?
ドット・チャートと同じレポートにある経済見通しでも、FRBが注視する個人消費価格指数(PCE)の中間値が前年比で5.3%と、9月の4.2%から大幅に引き上げられた。変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数の見通しも、9月の3.7%から4.4%に引き上げられており、FOMC内でインフレに関する警戒感が急速に高まったことが見てとれる。
金融引き締め方針でもアメリカの株価は順調
ただFRBの金融政策がここまで劇的に変化したにもかかわらず、市場はFOMCの声明発表後、総じてかなり楽観的な反応を示している。株価は声明の発表直前直後には乱高下したものの、その後は買いが優勢となっている。
中には「今のアメリカ経済の底堅さをもってすれば、この程度の金融引き締めのペースなら十分に吸収可能であり、景気がしっかりと回復する中で株価の上昇も続く」との見方が改めて強まったためと指摘する声も根強い。果たして、そこまでアメリカの経済は好調で、「FRBの金融引き締めの影響も深刻なものにはならない」と言い切れるのだろうか。
こうした楽観的な見通しの根拠の一つとして、アラン・グリーンスパン議長時代のFRBが2004年6月から17回連続で利上げを行った際に、同国の長期金利が逆に低下傾向を強め、同議長に「謎(Conundrum)」と言わしめた市場の反応が例に挙げられているようだ。
確かに、このときの10年債利回りはFRBが利上げに踏み切る直前の2004年6月14日に4.89%まで上昇したが、その後は一転して低下基調を強め、半期に一度の議会証言で「謎」発言が飛び出した2005年2月には一時4.10%を割り込むに至っている。その後は2005年6月に4.00%を割り込むまで下がった後、ようやく上昇に転じたが、利上げ開始前につけた4.89%を上回るのは2006年4月と、そこからさらに10カ月もの時間を要する格好となった。
こうした例を示されれば「FRBの金融引き締めは必ずしも長期金利の上昇につながらないし、株価の下落要因にもならない」との見方にも一理ありそうと、うなずいてしまうところだ。だが、今回は、経済環境で明らかな違いがある。パウエル議長に方針転換を強いる要因となったインフレ圧力の急速な高まりと、その要因の一つとされている、量的緩和策を含めた過剰な金融緩和策だ。
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