「FRB利上げでも株価上昇」と読む市場は正しいか 株価に悪い影響がある金利上昇は起こらない?
2004年6月に利上げが始まった際の消費者物価指数の上昇率は前年比で3.2%。変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数は1.9%だった。利上げ直前につけた4.89%という10年債の利回りは、実質利回りで見ると1%台後半(=4.89-3.2)は確保できていたというわけだ。その後利上げが進むなかでも長期金利が低下に転じたわけだが、物価上昇率との関係でみる限り、それを受け入れる余裕はあったということなのだろう。
一方、足元の状況はどうだろうか。FOMC声明発表時の12月15日時点での10年債の利回りは1.47%。それに対して11月の消費者物価指数は前年比で6.9%、コア指数でも5.0%の上昇だ。つまり10年債の実質的な利回りは、大幅なマイナスとなっている。この先FRBが金融政策を引き締めていくとの方針を示す中で、それを受け入れるだけの余裕が市場にあるとは思えない。FRBの利上げが間近に迫る中で、実質的なマイナス金利となっているアメリカの長期債を積極的に買い進もうという向きは、そう多くはいないのではないか。
また、足元でFRBが債券を毎月新規に購入するという量的緩和策(QE)を続けていることも、2004年当時との大きな違いだ。11月からテーパリングを開始し、今回のFOMCでそのペースを速める決定をしたとは言え、テーパリングが終了する2022年3月まではFRBのバランスシートは拡大を続ける。
だが、パウエル議長が今回のFOMC後の記者会見で、現在保持している債券が満期を迎えた際に、それを再購入せずバランスシートを縮小する、量的引き締め(QT)の検討を始めたことを明らかにしたことには注意が必要だ。
長期金利はこれから上昇していく
QTの実施時期についてはまだ何も決まっていないということだが、検討を始めたということは、インフレの状況などに大きな変化がない限り、QTの開始もそれほど遠い将来の話ではないのかもしれない。QEは確かに強力な金融緩和のツールであり、その効果も十分に確認されているが、それだけにその資金の流れを逆転させるQTの影響も、またかなりのものになると見ておいたほうがよい。
長期債の実質金利が大幅なマイナスとなっているのに加え、今後予想されるFRBの金融引き締めが利上げプラスQTという、これまでに例のない強力なものとなることもありうる中、2004年と同様に長期金利が安定するという「謎」の現象が生じる可能性は、極めて低そうだ。
サプライチェーン問題や労働市場の逼迫というインフレの要因となっている問題が一気に解決し、インフレ圧力が急速に低下する奇跡でも起こらない限り、やはり長期金利は上昇すると考えるのが自然だ。そうした中では、ハイテク銘柄を中心とした株価の調整も、また大きなものになるのは避けられないと考えざるをえない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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