作田会長が描くルネサス浮上への戦略とは? 粗利率重視で事業構成を変えていく
――これから注力する分野とは。
大きく2つある。
1つは粗利率の改善で、そこに私はすごく力を入れている。売上高を右肩上がりの成長にしようとしても、外部環境に影響されてしまう。粗利率ならば比較的、自助努力で改善できる。16年度にかけて年間2%ずつ粗利率を改善させる予定だが、もう多くの社員を減らす考えはないので、製品構成と事業構成を変えていく必要がある。だから今、まさにEOL(生産終了)の対象製品を絞り込んでいるところで、不得意な商品や事業分野からは撤退させてもらう。
R&Dに集中し粗利率の高い新商品を出したい
もう1つはR&D(研究開発)に集中し、新い事業ドメインで売上高を増やしていく。私はお客様の信頼と期待が、粗利に現れると考えている。だから粗利率が低い商品は、お客様からバカにされているんだと社内で言っている。R&Dに集中することで強い商品を作り、納得のできる粗利を出していきたい。
16年度までは既存ビジネスの中で粗利率を改善させながら、売上高は横ばいでも利益を増やす方針だ。その間にR&Dの成果で従来よりも高く売れる新たな商品が出てくることを期待している。都合のよいシナリオだが、その通りに進めば80点と自己採点できる。
――ルネサスには顧客の仕様に沿った商品を下請け的に製造し、毎年のコストダウンにも応じる体質がしみ付いているように見える。高く売れる商品を自ら提案し、顧客と価格交渉することが現場社員にできるのか。
自動車業界というのは、日本だけでなく北米、欧州メーカーでも毎年コストダウンを求めてくる。それに「はい」と応えるか、抵抗するかだ。過去はどちらかというと、売り上げ確保に優先順位を置きすぎたと思う。だからお客様から「価格を下げないなら、ほかに選択肢があるからね」と言われると、つい応じてしまう。
去年も今年も一歩間違えれば会社が危うい状況だったから、私は社員に対して、お客様に自己主張して「いらん」と言われるか、「はい」と言って死ぬのかどっちかを選べと言った。急には変われないけれど、少しずつお客様と交渉するようになってきている。契約書の内容を確認して、「ここがおかしい」と言えるようになり、それから誰が猫の首に鈴を付けるかといった話し合いになっていった事例がかなりあった。現場は変わり始めている。
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