ビートルズ「最後のライブ」はなぜ屋上だったのか 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter37

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というのも、その年の10月、ビートルズは、財務状況の窮状を訴える専属会計士からの手紙を受け取っていた。そこには、1万ポンドの支出につき12万ポンドの収入がないと、莫大な額の税金を支払うことができないと記されていた。

このころまでに、アップル社の経営は、深刻な悪循環に陥っていたのだった。

「もう、これで終わりだ」

映画『レット・イット・ビー』のラストを飾るコンサートについて、リンゼイ=ホッグは、あるアイディアを膨らませていた。サハラ砂漠か、あるいは大型客船を舞台として、さまざまな文化の人々がともに集い、世界平和を祈るという、壮大な案だ。

「ビートルズが、日の出とともに演奏を始めるんだ」

リンゼイ=ホッグは4人に説明した。

「そこに、1日かけて方々から人々が集まってくる、っていうのはどうだろう」

「ローマの円形劇場のレプリカを作って、そこに僕たちがライオンを何頭か率いて現われるっていうのはどうかな」と、ポールが提案した。

「リバプールに戻ろうよ」とリンゴが割って入る。

「キャバーン・クラブ〔ビートルズが初めてギグをした場所〕にさ」

ジョンの案は、こうだった。

「僕は、アシュラム〔以前ビートルズが瞑想訓練で数カ月滞在したインドの僧院〕でやったらどうかと考えているんだけど」

なんといっても、世界一のバンド、ビートルズの映画だ。見たこともないような、大胆なエンディングが必要だった。

一方、ジョージにも考えがあった。

「もう、これで終わりだ」

カメラが回る中、ピリピリしたムードで続けられていたリハーサルの7日目の昼食中、ふいにジョージが言った。

「クラブで会おう」

ジョージはそのままスタジオから出ていき、14歳で加入したバンドを去ったのだった。

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