ニカラグアが台湾と国交断絶を宣言した意図 民主主義サミット開催日、中国によるアメリカのメンツ潰しか
陳副教授は「欧米諸国からの制裁を受けたこの1カ月の間にニカラグアは中国に接近し、中国との国交回復を宣言するに至った。国交回復を民主主義サミット初日に発表したことは台湾への外交的ダメージを狙っただけでなく、アメリカをはじめとする民主主義陣営のメンツを潰すという意図が濃厚である」としている。
さらに「台湾と中南米の国々との外交関係は、多くの場合、アメリカの国家との友好関係に支えられている。アメリカとニカラグアの関係が崩れたことが、台湾とニカラグアの外交関係に影響する可能性は高かった」と指摘した。
ニカラグアとの国交断絶により、中華民国(台湾)と国交を結ぶ国は14カ国となった。台湾の国際的な孤立を危ぶむ声もあるが、陳副教授は国交がある国が1桁台にでもならない限り、台湾への影響は「象徴的」なものに過ぎず、大きな損失は出ないだろうとの考えを示している。
台湾外交の変化も影響か
また、ニカラグアとの国交断絶は、近年の台湾の外交政策の転換も少なからず影響しているという。以前の台湾は、発展途上国に金銭を援助することで外交関係を維持していた。しかし、蔡英文政権で外交政策は「援助外交」から「地道外交」へと転換。外国への支援は金銭によるものから投資やインフラ整備、社会福祉へと変わり、以前のように相手国に求められるままに金銭や物資の援助をすることはなくなった。
実は、近年、台湾はニカラグアのオルテガ大統領の要求を拒否したことがあり、オルテガ大統領の不興を買っていた。その点でも、台湾とニカラグアの断交は必然の結果と言える。
ここ数年、中国政府の働きかけにより、台湾、すなわち中華民国と国交を結ぶ国は減少傾向にある。中国にとっては「外交努力の賜物」にも見えるが、陳副教授は「中国政府はその意味をよく考えるべきだ」と指摘する。陳副教授によると、台湾が国際的に「中華民国」と認められる機会が少なくなるということは、すなわち台湾市民の「中華民国」という名への愛着が失われ、「台湾」というアイデンティティーが強まることにつながるという。将来、中華民国が「台湾」に改名したとしたら、それは「一つの中国」を標榜する中国にとって非常に都合が悪いことだろう。
2021年後半、台湾はリトアニアとの関係強化が実現するなど外交上の大きな成果があった。中台及びアジア太平洋地区の経済・学術交流、人材育成を推進する「中華亜太菁英交流協会(APEIA)」で秘書長を務める王智盛氏は、中国にはこの風向きを変えなければならないというプレッシャーがあったはずだと指摘する。実際にニカラグア大統領選挙からわずか1カ月後に両国は国交回復、中国は中華民国と国交のある国を自身の陣営に引き入れていく姿勢を強調しているのだ。
アメリカが110ほどの民主国家を招いて民主主義サミットを開催したそのとき、民主主義サミットに招待されなかったニカラグアに近づき、台湾との断交を実現させた中国。王氏は、これをアメリカのメンツ潰しであると同時に、中国がアメリカと世界の「話語権(自身の言説を受け入れてもらう権利、ディスコース・パワー)」を争う姿勢にほかならないとみている。
王氏は台湾とニカラグアの断交について、「根底に米中の価値観の相違による争いがある。中国が譲歩することはないだろう」とし、「中国は民主主義サミットに参加していない国を集め、民主主義サミットを反撃の場として利用しようとしたのだ」と分析している。
〈台湾『今周刊』2021年12月10日 〉
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