台湾iPhone生産受託企業がEV市場を狙うワケ 童子賢ペガトロン会長が狙うEV市場での勝機
スマホ産業がEVへ参入するワケ
EVの盛り上がりは台湾にとって、とても幸運なことだ。現在、台湾の電子部品メーカーはスマートフォン製造に依存の傾向があるが、EV参入によりスマートフォンへの依存からの脱却が期待できる。一方で、今後もパソコンやスマートフォンへの部品供給は引き続き行われると見られるが、これはEVへ参入することで経営リスクを分散させることができるのだ。
そもそも、スマートフォン市場は非常に特殊だ。まず市場の利益の80%をアップルが得ており、残りの20%をサムスン、ファーウェイ、OPPO、Xiaomi、レノボなどの7社が食い合っているなど独占性が高い市場である。また最大手ブランドの規格が業界をリードする。大手がCPUやARMアーキテクチャの設計のみ自社で行い、半導体を構成する部品素材であるウェハーの製造は外注することさえある。こうして、実際に半導体を製造するファウンドリーの利益はつねに圧迫されている。
だが、自動車市場はスマートフォン市場とは違う。まず挙げられるのは市場規模の違いだ。自動車市場の生産額は毎年4兆USドル(約426兆円)近くに上るのに対し、パソコン産業はノートとデスクトップを合わせても2000億USドル(約21兆円)程度、スマートフォン市場は5000億USドル(約53兆円)、半導体産業は4300USドル(約45兆円)だ。この数字を見れば、市場規模が桁違いであることがわかるだろう。
また、自動車市場にはスマートフォン市場におけるアップルのような支配者がいないというのも大きな違いの1つだ。現在、世界の自動車市場には20以上の主要メーカーが存在する。BMWとメルセデス・ベンツは毎年1000億ユーロ(約12兆9000億円)の収益を上げているが、その出荷台数はトップ10にも届かない。これが意味するのは、ブランドが細分化されており、絶対的な強者がいないということである。
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